特別が欲しい | ナノ

「鬼道、ゴー「断る」


風丸ははあ、と溜息をついた。
ただ恋人である鬼道のゴーグルを外そうとしただけなのに。

極度の恥ずかしがりやなのか、それとも何かポリシーのような物でもあるのか。
人前では絶対に外すことの無いゴーグル。


(キャラバンで寝る時だって着けてたんだっけ…)


二人でいるときは普通に外してくれる。
自分の赤とはまた違うとてもとても綺麗な目をしているのだ。
風丸はその紅緋の瞳に見つめられるのが好きだ。
冷静な考えを映し出した燃え盛る火のように真っ赤な瞳が。
だがどうしたことか。教室やここ、部室といった外ではいっさいゴーグルを外してはくれないのだ。
もし理由があるのなら知りたい。鬼道について全部知りたい。
風丸は思い切って聞いてみることにした。


「なあ鬼道」
「何だ?」
「なんで人前では目見せてくれないんだよ」


そういうと鬼道はフッと笑った。
なんだか馬鹿にされているような気がして少しムッとした。


「なんだよ」
「…そんなに見たいなら、俺の家に来い。」
「なんでだよ!」


風丸が思わずつっこむと、鬼道が急に真面目な顔でこちらを見た。
よく見ればゴーグルからはうっすらと瞳が見えていて。


「…やっぱりさ、いつでもお前の目を見てたいよ」
「それは出来ないな」
「だからなんで…」


ドン、と部室の壁に体を押し付けられた。鬼道の顔が風丸の目の前に迫ってきた。
ビクリと方を揺らし目を瞑る風丸。だがいくら待っても何も起こらない。
うっすらと風丸が目を開けるとそこには真っ赤な瞳に映った自分の姿があった。
唇をペロリと舐められて、


「きど、」
「お前以外に俺の顔は見せたくないんだ」
「なんで」
「さあ…特別が欲しいのかもな」
「特別…」


お前だけの俺と俺だけのお前が欲しいんだよ。
そう鬼道が呟くとたちまち風丸の顔は鬼道の目みたいに真っ赤になった。
それを見て笑う鬼道がいつものゴーグルに戻るまで、あと少し。


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