見えない鎖で繋げばいい | ナノ
「僕、風丸くんと世界に行けて良かったよ。」


僕は思い出したように呟いた。
彼はというとじっと前を見ていた。
その目は稲妻町に沈む夕日を見つめていた。目線は変えずに口を開く。

「それはどうも」
「やだなあ、もっと喜んでよ」
「お前が言うとお世辞か嫌味にしか聞こえないぜ」

くつくつと笑いながらもやはり目は夕日を見つめていて。
美しい水色が夕日の紅に染まる様は目を離せない美しさだった。

「だって、もう風丸くん無しじゃ生きていけないよ」
「…それは大変だな」

あ、照れてる。夕日とその柔らかそうな頬との色を比べていると不意に彼がこちらを見た。
何より赤い深紅の瞳。
嗚呼、やはり綺麗だ。その深い赤も、鮮やかな浅葱も。
美しさと儚さを持つ彼は一度見たら決して忘れることの無い存在感と、触れていないと見えなくなってしまいそうな感覚を僕に与える。

彼の隣に座り込み、両腕を彼にまとわりつかせる。
風丸くんも嫌がる様子も無く、ただ受け止めてくれていた。
ぎゅう、と力を入れれば「苦しいよ」と小さな声が返ってきたけど、僕はひたすら抱きしめていた。
僕より少しだけ色の濃い頬に自分の頬を寄せる。
さすがに恥ずかしいのか、肩を押されたけれど、やめるなんてできない。

「風丸くん、」
「っ…何だよ」

そのまま彼の唇に唇を重ねて、彼の髪の毛をかき分けた。
二つの宝石が、僕だけを映している。

「いま、離ればなれになるなんて考えたくないし考えられないよ」
そう言えば僕の耳元に風丸くんの唇が近づいて、そっと言葉を落としていった。


見えない鎖で繋げばいい
(そうすれば、俺は一生お前の物だろ)


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四万打リクの吹風です。
吹風は百合百合しく可愛いイメージなのですが
自分で書くとなぜか静かな文になってしまいます/(^O^)\
リクエストありがとうございました!!
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