少しだけこうしていたいの | ナノ

少しだけ。




トサッ

背中に感触。

「風丸?どうした」
「え、あ…うーん…別に?」

そう言いつつ目を泳がせている風丸はどうみても「別に」ではなかった。

「別にじゃないだろ。何かあったのか?」
「何もないって…豪炎寺は心配性だな」

渇いた笑いも俺の心配を加速させるだけで。
だが自分にだって少なからず人に言いたくないことはある。

(かといって此処で聞かないで居ることなんて出来ないだろ…)

普段は凛々しく強気な恋人が弱気になるなんてよっぽどのことがあるに違いない。
監督に何か言われた?思い通りに走れなかった?何か失敗をした?
疑問は不安に変り続けるだけ。
俺が不安そうな顔でもしていたのか、風丸が静かに口を開いた。

「お前ってモテるよな」
「は?」

それは予想外の言葉だった。

「今日お前の家に行く途中女の子につかまった。」
「ああ…」
「豪炎寺に渡してくれって、いっぱい物もらった」
「え、」
「そこ」

風丸が指差した方を見ると、今日持ってきていた紙袋。
中にはなんだか可愛らしいラッピングのものやミサンガなどが入っていた。
手紙なんて物もある。

「なるほど」
「やっぱり俺、お前に相応しくないのかもしれないって、やっぱり」

ふと気づくと風丸の体温は俺の背中から離れていた。
お互い背中を向け合うような体制で話を続ける。
でも俺はとっくに不安なんて消し飛んでいた。
いつ抱きしめてやろうか、とそればかり考えていた。

「やっぱり男同士っておかしいんだよな…」
「そうだな」
「俺が女だったらもっと堂々としてられるのかな」
「さあな」
「やっぱり俺じゃっ…うわっ」

勢いよく飛びついて、これでもかと抱きしめて。
首筋にキスをすると風丸は顔を真っ赤にした。

「何だよ豪炎寺っ!俺、」
「だからどうした」
「っ!?」
「俺がお前を好きでお前も俺を好き。それ以外に何が要る」
「豪炎寺…」

今まで何度も風丸はこうやって落ち込んだり、そのたびに同じ思いをぶつけてきた。
風丸の性格だ。また暫くたったら不安に駆られるのだろう。
それでもいい。

「何度でも言ってやる。愛してる。」
「わ、分かったから…もう分かったって、」
「ならいい」

またぎゅううっと抱きしめて…次は風丸も抵抗しなくなった。
フッと力を抜いて俺に体重を預けてくれる。

「もう大丈夫だな」
「うん…あ、でも」
「でも?」
「もう少し、駄目?」
「!…あと少し、な」

少しだけこうしたいの
「ご、豪炎寺…もういいって」「俺はまだこうしてたい」


片目同盟webアンソロジー様へ捧げる文章です。
お粗末さまです…なんかタイトルに沿ってない気もしますが…!
片目良いですよね…本当、ていうか風丸さんが好き過ぎるだけかもしれまs(ry
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -