照らす光 | ナノ



「アフロディ!」

なんだい?と振り返る金色。サラサラという音が聞こえる。

「えっと…?」
「綱海条介だ!」

何がおかしいか綱海には分からないがアフロディはくすくすと笑いながら言った。

「いい名だね。僕のチームにも海を司る者が居たよ」
「俺とそいつ、どっちが強いかな!」

アフロディは綱海をまじまじと見つめる。
風丸に似た紅緋の視線はなんだか風丸に見つめられたときよりもくすぐったい気がする。

「力で彼に勝つのはまず無理だろうね。まあ総合的には互角くらいじゃないかな」
「会ってみてえなあ」
「いつか。この戦いが終わったらね」

フ、と笑うアフロディ。仕草一つ一つが優美だ、と綱海は思った。
そうだ、質問をしにきたのだった。

「なあ、アフロディはアフロディなのか?」
「…?どういう意味かな?」

アフロディが首をかしげると絹の金がしとやかに流れた。

「本名はなんていうんだ?」
「ああ…」

そこまでいい言葉を濁すアフロディ。

「何か言いたくない理由があるのか?」
「いや…あまり好きじゃないんだ。女みたいでさ」

女みたいなもんだしいいじゃねえかという言葉を飲み込む綱海。
なんと言おうか迷っているとアフロディが口を開いた。

「亜風炉照美」
「!」
「君には、なんだか教えたくなったよ」

ニコリと笑うアフロディが何故か直視できずに慌てて綱海は重ねて問いかける。

「どっ…どんな字かくんだ?」

こう書くんだよ、と綺麗な指で砂に溝を作っていく。
アフロディが触れた砂だけ光っているような気さえした。
現れた文字を見つめ、綱海は笑った。

「いい名前じゃねーか!!」
「どうしてそう思うんだい?」

だって、と笑顔のまま綱海は言う。

「美しく照る。お前にぴったりだ!!」

その笑顔を見たアフロディは少し目を細め言った。

「君の笑顔の方が眩しいけどね」
「じゃあずっと照らし続けてやるよ!」

恥ずかしいことを平気で言う人だねとアフロディは言った。
その顔が少し赤らんでいる理由を綱海はまだ知らない。





(あの瞬間、僕はこの名前が好きになったみたいだ)

(あの瞬間、ずっとお前と笑っていたいと思ったんだ)





らす
君も、僕も。
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