EP.82
地平線から太陽が昇り、光り輝く世界が広がっていく。
それと同時に陽の光とは違う閃光が、大地から目を眩ませるように何度も何度も立ち上っていくのが飛空挺から見えた。

「今のは一体……。セッツァー!急いでくれ!!」
「分かってる!!」

それから程なくしてサマサという村の近くに着陸した飛空挺。ティナ達を探そうとした矢先、何処かへと向かう魔導アーマーや帝国兵の姿が遠くに見えた。
物々しい雰囲気を感じ取り、エドガー、マッシュ、セッツァーとカイエンさんが町の様子を窺いに向かった。

飛空挺で四人の後ろ姿を見送って、モグとガウと3人でその帰りを待つ。暫くすると村からこっちに向かってくる皆の姿の中に、セリスが居ることに気がついた。

「セリ、ス……ッセリス……だ」

歩き出す足が段々と早くなり、いつの間にか走り出す。そしてセリスの前に行くと、ティナが私を見つけて傍に近寄り三人で抱き締めあった。

「良かった……っ!良かった…セリス…ティナ…!」
「ユカも帰ってきたのね。会いたかった」
「ティナ迷惑掛けてごめん…。私、皆と居たい」
「ユカ…ティナ…。私も共に居たいわ」
「うん……ッ」
「皆、一緒に居ましょう」

滲む涙を笑顔に変換して、三人でそれぞれ手を繋ぎあった。嬉しい再会に花を咲かせていると、1人の女の子が私達を見ながらスケッチブックを持って筆を奔らせていることに気つく。

「この子は?」
「リルムって言うの。そちらの方はストラゴスでリルムのお爺さんよ」

彼女の描いているスケッチを覗き見ようとすると、寸前でバタンと閉じられてしまう。呆気にとられていると、お爺さんのストラゴズさんが代わりに謝ってきた。

「すまんのう。この子は気分屋の上にワガママでのう」
「うるさい!じじい」
「こら!そんな言葉使いをするなと言っておろうが!」
「あの、私が勝手に見ようとしたのが悪いんです。ごめんなさい、リルムちゃん」
「・・・・・・別に、いいけどさ」
「今度は見せてってお願いしてからにするから」
「・・・そんなに見たいの?」
「うん。私ね絵が好きなんだ」

こっちを見ずに差し出されたスケッチブックを開けば、そこにはまるで実物と見間違う程の絵が描かれていた。あまりに凄すぎて言葉がでないままずっと見続けていると、リルムちゃんがニコニコしながら私の肖像画を描いてあげると言ってくれた。

「本当に描いてくれるの?」
「いいよ」
「それじゃあ、お願いしても」
「やめんかリルム!!」
「ちぇ!!このおせっかいじじい!!」

すたこらと逃げ出したリルムちゃんを、ストラゴズさんが追いかけていく。どうして怒っているのか分からず困惑していると、ティナが少し困ったように笑いながら教えてくれた。

「描いたものがスケッチから出てきて、相手を攻撃してしまうの」
「そんな事本当に出来るの?」
「リルムがモンスターを描いたら、本物のモンスターが出てきて技を繰り出したわ」

驚きの連続だったけれど、自分には皆のように技がないし、戦えないから大した問題もないような気もする。
だからいつか描いてもらえたらいいなと思いっていたら、村から歩いてきたロックが私を見つけて“お帰り”と言ってくれた。

ロックの言葉にうんと頷いて、私も相手に良かったねと返すと、今度はロックが頷く。セリスとの関係も元に戻ったようで、清清しい表情をしているから嬉しくなった。

話し終えた後に飛空挺へ戻ろうとしたのだが、サマサの村から今度は見たこともない女性がこっちに歩いてくるのが見えた。
その人の後方でエドガーとマッシュが話をしていたけど、突然マッシュがその女性に何か一言話すと、怒ったように飛空挺へと戻っていった。

「……ロック。マッシュとあの人に何かあったの?」
「ああ……。ちょっとな」

濁すような言葉が嫌な気持ちを呼び起こす。
聞かなければいいのか、心の靄を取る為に聞いたほうがいいのか。
考えているうちに、その女性とエドガーが自分の目の前まで来ると挨拶を交わすために足を止めていた。

「ユカ、紹介するよ。新しく我々と同行する事になったルノアだ」
「初めまして、ルノアさん。ユカと言います」
「…ああ」

言葉少ない挨拶を交わすと、ルノアさんはゆっくりと歩いていった。
とても凛としていて清楚さと水を連想させる綺麗さがあって、どこかティナと似た雰囲気を感じたのは気のせいだろうか。

サマサの村で集合した皆が、飛空挺に乗り込んでゆく。ガストラ帝国を探すため大地から離陸した瞬間、いきなり地上から轟音が鳴り響き始めた。

「島が…!?大地が…叫び声をあげている……」

ティナがその言葉を発した直後、信じられない光景が目の前に広がっていく。
大陸の一部が大地から物凄い音と共に剥がれていき、空へと浮かび上がっていった。空高く浮かんだ島が自分達や大陸に影をもたらし、その光景を見たストラゴズさんが呟く。

「魔導の始まり……三闘神」
「あれが?」
「石化せし3人が向かい合い力を中和させることで自らを封じたと言われておる」

ストラゴズさんの言葉はその後も続き、衝撃の事実をあきらかにする。
三体の石像の視線がそらされた時、バランスが崩れその力は世界を滅ぼす。話を聞いた皆が驚きの声を上げ、上空に浮かんだ島に視線を向けていた。

あの大陸に三闘神の像を奪ったガストラ帝国とケフカがいる。
そしてその大陸に乗り込み世界崩壊を止めることが、今すべき事だった。


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