良く晴れた日曜日。特にすることも無かった私はトキワに散歩がてら出掛けていた。

「あれ、ナマエ?」


突然私を呼ぶ声にくるりと振り返るとグリーンさん。お得意のポーズは流石にやってなかった。ほらあの、手を頭のとこに持って行って、『よっ!』って感じのやつ。


『グリーンさん。こんにちは』
「ああ。トキワに用事?」
『そういう訳じゃないですよ。只の散歩です』


お前ひまなんだななんて哀れんだ目で見られていらっとした。貴方ほどじゃ無いですよって。忙しいならジムに戻ればいいと思う。


「でもそれならマサラ行かなくていいのかよ?」
『?何でマサラに』
「何で、ってレッドいるし…」
『うわわわわ!』


レッドと口にするグリーンさんの口をふさいだ。何を言い出すんだこの人は!


「んー!んー!」

口をふさぐとやっぱり息苦しいのかうめき声を上げ始めたから手を離してあげた。


「ぷは!…いきなり何だよ!」
『いや、出来心で…』
「絶対嘘だろ!」

当たり前だ。出来心で人の口を塞ぐなんて不躾な真似はしない。でもグリーンさんが悪いんだよ。いきなりレッドさんの名前なんか出すし…!


「…ナマエ?」

未だ抗議を続けるグリーンさんを軽くあしらっていると、またまた私を呼ぶ声が。何コレデジャヴ?


「お、レッド」


声の主はグリーンさんが呼ぶ前に分かっていた。だけどそんな簡単に振り向くなんてできないというか何というか。


「…何でナマエがグリーンと?」
「え?ああ、偶然会ったんだよ」
「グリーンには聞いてない」


ぴしゃり、と効果音が付きそうなくらいグリーンさんの答えを跳ね返すレッドさん。レッドさんの足は真っ直ぐ私に向かっていて、ぱしと腕を捕まれた。



「…ナマエ、今良い?」
『は、はい』


後ろではグリーンさんが苦笑いしながら手を振っていた。

そのまま黙って引っ張られてきたのは1番道路。無口なのはいつもの事だけど、何か怒ってる…?

立ち止まっても全く喋り出さないレッドさんに私の不安はつもるばかりだった。


「…ねえナマエ」
『は、はい』

突然話し出すレッドさんに緊張が走る。


「グリーンと何してたの?」
『偶然会ったので少し喋ってました…』
「…俺とは喋れないのに?」


う、と核心をつかれた。
実は私とレッドさんはつい最近その、付き合い出して…。初めて付き合う私は色々分からないことが多くて、頭がぐちゃぐちゃだったから少し時間を下さいなんて頼んでしまっていたのだ。


何も言えなくて黙ってしまうと、レッドさんは少し悲しそうな顔になる。


「…俺のこと、嫌い?」
『そんなわけ!…レッドさんのことは大好きです。でも、』
「…でも?」


私が言葉につまると、何も言わずに待っててくれるレッドさん。本当に優しい。


『…だから、不安で』
「不安?」
『はい。関係が変わって、どうしたら良いのか分かんなくて』

ごめんなさい、と続けるとふわりと微笑んでて、頭を撫でてくれるレッドさん。


『?』
「…無理に変わらなくて良い。俺は、そのままのナマエが好き」
『…レッドさん』


だけどと続けるレッドさんに身構える。何を言われるのかわからなくて、少し怖い。

「敬語はやだ。名前も呼んでほしい」
『へ?』
「ふ、変な声」

くすと笑うレッドさんにまた胸がとくんと鳴った。この笑顔がだいすき。


「ほら、名前」
『う、レ…レッド?』
「うん。よくできました」


満足そうなレッドさ…、レッドにうるさく心臓が鳴り出す。私はレッドが好きなんだって、改めて実感する。


「…あと、俺だって嫉妬するから」
『え?』
「あんまりグリーンとかに近寄んないで」『ええ!?』


俺、多分すぐ嫉妬する。でもナマエを離す気なんてさらさら無いよ。だから、覚悟しといて。


そう意地悪く笑うレッドは、絶対確信犯だと思う。だけどそんな言葉に顔を真っ赤にしちゃう辺り、私は彼には敵わないのだろう。





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