「ナマエナマエナマエー!」
『うわ!いきなり何ですか!』
「…ナマエ冷たい」


いきなり飛び付いてきてその後瞳を潤わせてしょぼんとするクダリさんは、天使と形容されるくらいの可愛さ。だけど私は知ってる。クダリさんは天使の皮を被った悪魔だってこと。



『いきなり飛び付いてくるクダリさんが悪いんですよ』
「大丈夫。ぼくら、付き合ってる!」
「付き合ってますけど、人前でベタベタするのは嫌いなんです!」



思えばクダリさんは付き合う前からスキンシップが激しい人だった。初めて話しかけられたとき、異様に顔が近かったのを覚えている。

だけど私はあんまりスキンシップが得意じゃない。もちろんクダリさんのことはその、好きなのだけれど。


「ナマエ、ぼくのこと嫌い?」


だけどどこでどう取り違えたのか、私より年上だけど年下っぽいクダリさんは相変わらずしょぼんとしながらこちらを見つめていた。

う、上目遣いは反則です!


『そうじゃないです!クダリさんの事は、その、好き、ですけど、やっぱり人前でいちゃいちゃするのは恥ずかしいと言うか…』


す、好きだなんて伝えたのは久しぶりかもしれない。やばい、これは想像以上に照れるぞ。


「ナマエぼくのこと、好き?」
『…はい』
「そっか!ぼくもナマエ好き!大好き!」


そう言ってまたぎゅーっと抱きついてくるクダリさん。なんだコイツちっとも分かってないじゃないか!



『だ、だからクダリさん!』
「だって、ぼくのって見せつけとかないと皆、ナマエ取っちゃう」
『はい…?』


スキンシップは止めて欲しいと言うことを再度伝えようとしたら、想像を絶することを言い放ったクダリさん。


私が取られる…。いや、ないない!それだけは絶対にない!地球が1万回回ったってあり得ないだろう。


「だから!皆、ナマエ取っちゃう!ノボリとか、1番危険!」
『いやいや、それは無いですから!』
「ある!」


無いと言ってるのにそれでも聞かないクダリさん。そこからはある!ない!の繰り返し。子供か私は。

というか、私が取られるとかいうのは全く無いにしろ、クダリさんが取られるというのは全然あり得ることだ。だってクダリさんはサブウェイマスターでカッコよくて、バトル強くて…。私なんかがクダリさんと付き合えてること事態が不思議なんだから。



「ナマエは、ぼくの!誰にも、渡さない。ぜったい!」


クダリさんは更に抱き締めて続ける。


「ぼく、ナマエにもっと好きになってもらえるように、がんばる。だから、ぼくから、離れないで」


すがるように私を離さないクダリさん。何がそんなに彼を不安にさせているのかは分からないけれど、クダリさんの背中にそっと腕を回した。


「!、ナマエ何で?何で抱きつくの?」
『何でって、クダリさんが好きだからです。何がそんなに不安なんですか?』
「ぜんぶ。ぜんぶ不安」
『全部?』
「うん」


何が不安なのか尋ねると全部不安だと言い放つクダリさん。え、これ私彼女失格なんじゃ…。


『私は、クダリさんが大好きです』
「うん。ぼくも、大好き」
『心配することなんて無いんですよ?』

私はどこにも行きませんと言うと、抱きしめる腕がするりと離れた。


「、ほんと?」
『はい!本当です』
「じゃあ、ちゅー。ちゅーして」
『はい!勿論で…ええ!?』


何を言い出すんだこの白い悪魔は!一瞬脳内フリーズしたよ!どうしてくれるんだこんにゃろう。


「ナマエ、はやく!」

それでもこうなってしまったクダリさんを止めることが不可能だってことは重々理解してる。仕方なく軽く触れる程度のキスをした。


『…これでいいですか?』
「だめ、全然だめ」
『ええ』
「こんなんじゃ、全然足りない」


そう言ったかと思えば、ぐいと引き寄せられて、深いキスを送られた。勿論ここは公衆の面前。だけどこのまま溺れてしまいたい、なんて思ってる私は、相当クダリさんに洗脳されてるのだと思う。



足りてないよ、いつだって
(きみが欲しくて、欲しくて)
(満たされることはきっと無い)




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