バレンタイン
世間はバレンタイン商戦一色というやつのようだ。
そう呟けば荒北は、あっそ、と流した。
「今年は大目に作らないとなぁ…部員には配るけど、特に新開がチョコ好きだから…でも甘いのが苦手だったり…逆に好きな人もいるだろうし、加減がなぁ…」
「俺には?」
隣りの席を見れば、すっとぼけたヤンキーが映った。
「欲しいの?」
「いらねーヨ、お前からのチョコなんか」
「あっそ、じゃあいやがらせに机ん中に突っ込んどいてやるよ」
「だからいらねーっつーの」
もらえる、とわかったからか荒北はわずかに口角を上げた。
おそらく14日はそわそわしていることだろう。
そして、私は荒北の机になどチョコレートを入れてはやらないのだ。きっと何度も机の中を確認するに違いない。
散々焦らしてから手渡ししてやるのだ。
何時間で我慢の限界が来るのだろうか。
彼のプライドと忍耐力がどこまでもつのか、14日が楽しみだ。
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