「ね、…臨也」


雨が降る路地に、名前の声が響いた。


「なに……………」

「臨也」

「なに……っ…」

「い、ざや」

「………も、喋るな…っ」


どくどく、

そんな効果音が聞こえて来る様に、名前の脇腹から血が流れる。

圧迫して止血をしているが、思ったより傷が深い。


「聞い、て……ざ、や」

「…も、喋るなって」

「わた、し…貴方を恨ま、ない」

「……だから……っ」

「私は、貴方を守、れて…本当に、ほ…とに」

「喋るなってば……!」


冷たくなっていく名前。

ああ頼むから、頼むから頼むから早く来いよ救急車。

いつももっと速いだろ。
頼むから、速く、速く。


「い……ざ、や」

「………っ……な、に」

「泣、かない……で」

「っ…泣いてないよ」


そっ、と名前の手が頬に触れた。

冷たい。
違うだろう。

君の手はもっと、もっと温かくて、こんな――こんなっ…!


「い、ざ……ゃ」


遠くから救急車のサイレンが聞こえる。

あぁやっと来た。
名前、もう助かるから。


「聞、……て」

「もう助かるから!喋っちゃだめだ……!」

「わた…し………ざやの、こと」



「愛……して、」



ずるり。

頬から滑り落ちたものはべちゃりと音を立てて地面に落ちた。


「すみません通報を受けて来たのですが、怪我人は―――っ?!」


どうして、

どうして、

どうして――――…



世界は、どうして悲しい



せめて、
俺にも「愛してる」と

言わせて欲しかった。





20100713.林田



ぬぁぁぁぁぁぁあ!

なにこれ!
なんだこれ!

一応解説すると、
名前さんは臨也に向けられた
銃やらナイフやらそういう物から
臨也を庇ったので
あんな事になってます。

臨也の焦りを書きたかったので
そこらはあえて
本文で解説してましぇん。


title:唇にナイフ様より