「…人間は何故生を与えられているんだろうね」


独り言、のつもりだった。

共に同じ空間の酸素を消耗している人間が一人居るが、聞いていないものだと思っていた。


「珍しいね、君が人間を否定するだなんて」


が、それは勘違いだった様で男、折原臨也は会話を始めた。


「価値が見出だせなくなってしまっただけだよ。あぁ、一時だけでいいから『俺を楽しませるために存在している』とか言わないでね。殺意が湧きそうだから」

「危ない危ない、殺されるとこだった」


言うつもりだったのか、というツッコミを心の中で呟いた。

否、言うだろうから最初に制止したのだけれども。


「私達人間は酸素を消耗し、二酸化炭素を排出するじゃない?それに比べて植物は二酸化炭素を消耗して酸素を産出する。どちらが地球に対して役に立っているかだなんて、一目瞭然だよね」

「まぁ、そうだね」

「例え、植物が酸素を産出するために二酸化炭素を排出しているのだとしても、私達が二酸化炭素を排出しない限り、大気は汚されない訳でしょう?」

「そうだね」

「私達は一体、何のために生を受けているのかな。そこは生物らしく繁殖?繁殖して何になるのかな。増えれば増える程、地球への害も比例して増えるというのにね。文化の繁栄とか?でもその繁栄の産物として生み出された物が、更に地球を潰しているじゃない」

「そうだね」

「臨也は話聞く気無いのかな」

「何を言うかな、さっきから真剣に聞いてるじゃないの」


生返事が真剣というのかは甚だ疑問だがまあいい。

この男の人を馬鹿にした態度は今に始まった事じゃない。


「ていうか、いつから君は自然愛好者になった訳?俺としてはそっちの方が気になるよ」

「別に自然愛好者でもないよ、昔なんか花を踏み潰すのが楽しくて楽しくて」

「あぁ、君の事だから綺麗な物が無惨な物になるのを見て楽しんでいたんだろうね」

「ご明察。まぁだから突発的に考えただけだよ、意味の無いただの理論の組み立て」


私は会話を終了させて、ソファーに寝転んだ。

暇だなぁ、と思い髪の毛を指に巻き付けて遊ぶ。


「じゃあさ、」

「のわっ」


さっきまでパソコンを見詰めていたはずの臨也が、私の上に乗っかっていた。


「君はさっき繁殖を否定していたけど、俺達が好んでやっているセックスは繁殖を行う行為じゃないのかな?」

「セックスをさらっと言うなよ」

「君も今言ったけどね。まぁ人間だなんて言っていても、本能、つまり根本の部分はそこらの犬とか猫とかと何ら変わらないよね。つまり、子孫繁栄だ」

「まぁ、確かにね」

「だからさ、そんなベストアンサーが有りもしない疑問を抱くくらいなら」


「俺と本能だけを感じなよ」



理論的本能への堕落



その囁きに体を震わせた。
体の全てが臨也を欲していた。

いくら理論を組み立てても
本能には臨也が染み付いていて

最後はやはり、
本能が物をいうらしい。


そっ、と自分から
臨也の唇に口付けた。




20100625.林田
(訂正:20101002)


まさかの名前変換無しの
饒舌ヒロイン


title:呼吸様より