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腰にある違和感に気付き、重い瞼を上げると、整った顔が目の前にあった。

一瞬、何事かと思い起き上がろうかと思ったが、その顔は良く知った顔で。

そして自分もそいつも生まれた時の姿だった事。腰に巻き付いているそいつの腕。情事後特有の腰の怠さ。ついでに今は、午前5時14分らしい。

――…ああ、私、昨日臨也とやったんだ…

私はぼんやりとした意識の中で、一人胸中で呟いた。

別に私達は恋仲とか、そういう甘ったるい関係じゃない。正確に言葉で表す事は出来ないのだが、敢えて言葉にするのなら『オトモダチ』か『セフレ』だろうか。

知り合い、と言うには近すぎて、親友と言うには遠い。しかしセフレと言うには近いところがあって――なんにせよ、他者から見れば複雑窮まりない関係だ。


ふいに、臨也の私の腰に廻っている腕の締め付けが強くなり、更に体が密着した。起きたのかと思えば、臨也にしては珍しく、子供の様な顔で眠っていた。

そして、体が密着した故に私の耳元に来た臨也の胸。とくん、とくんと一定のリズムが聞こえた。

――…臨也も、心臓あるんだね

そんな馬鹿げた事を考え、私は臨也の胸元でふふっと笑った。本当に馬鹿げた事だとは思うが、私はたまに、臨也は血の通った人間じゃないんじゃないかと思う時がある。

セルティの首を見ていたり、平和島君を嵌めたりして楽しそうな時の臨也は、どうも人間という物には見えにくいのだ。


「いっそ…、神様になればよかったのにね…臨也」

「…神様は、嫌かな」

「!臨也、起きてたの?」


不意に頭上から聞こえた、少し掠れた声に驚き、顔を上に上げる。眠たそうな臨也と目が合い、臨也はおはよ、と囁いた。


「んー…、名前が俺の胸元で笑った時くらいから」


臨也はそう言うと、私を更に強く抱きしめた。

――…ちょ、苦しいんだけど


「何で、神様になれば良かったのにって言ったの?」

「――え?」

「さっきの続き」


とっくに流れたかと思っていた私の独り言は、まだ会話として続くらしい。


「臨也は、世界を、臨也の思い通りに動かすの好きでしょう?」

「まぁ、ね」

「だから、神様になればそんなのもっと簡単だっただろうなって。それだけの話」


私が簡潔に理由を述べると、臨也はふぅんと静かに呟き、その後くつくつと喉を鳴らして笑った。


「なに、そんなに変?」


私が少し不機嫌に、臨也に問うと、臨也はいや、と言い笑いを止めた。


「俺がもし、神様だったら、俺は多分世界をどうこうしようなんて、考えなかっただろうね」

「?何故?」

「さぁて、何故でしょう?」

「…………うざ」


私がぼそり、と呟くと臨也は又もや喉で笑った。


「名前、本当に鈍いよねぇ」

「はぁ…?そりゃ臨也に比べたら誰だって勘は鈍いでしょ…」


――…あ、野性的な勘だったら平和島君もすごいかな?

私が心の中で訂正していると、臨也はわざとらしく溜息を吐いた。


「そういう発言が、まず鈍い」

「は……?、んっ――」


何だとこの野郎、と言おうとした唇は、臨也の唇によって塞がれた。唐突すぎて、頭が着いて行かない私を余所に、臨也は私の咥内を舌で犯し尽くす。


「ふ、……ん、っ!――!」


酸素が足りなくなり、臨也の胸をばんばんと叩くが臨也はそんなのお構い無し。意識が飛びそうになった頃、やっと唇は解放された。


「っは、はっ…はぁ……」

「うわー、すごいエロい顔」

「誰の、せいよ…っ…は」

「俺」


そう言い放ち、今度は臨也は私の胸に掌を置いた。咄嗟に掌を上から押さえ付ける。


「ちょ、何盛ってんの」

「盛ってなんかないよ、ただ……教え込んであげようと思って」

「何を、んっ、待、掌動かさな」

「俺が、何とも思ってない女を、自宅で寝かせると思う?」

「え?、んんっ…」


ぐにぐにと臨也の掌の動きと共に形が変わる胸。ていうか、今、何て言った?この男。


「さて、教え込んであげようか」

「…んっ、いざ、や…」


「君の頭が容量を越えるまで、嫌という程に、」





「愛ってやつを囁いてあげるよ」







20101020.林田
title by:呼吸



キザっぽいうざやさん。
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