崩壊を愛でた女神





ある一人の女の話をしようか。

彼女を形容する言葉を捜す時、出会って時間が立たない人間はきっとまず、「可愛い」「綺麗」そういった言葉を並べるだろう。

じゃあもし彼女と知り合って5分が立った人間は何と言うか。

それは一つに限られる。


それは、「オカシイ」だ。

















ぐしゃ、べちゃり

人間だったであろうモノの頭が潰れた。否、潰されたという方が的確な表現なのだが。


「It's dull...」


潰れた頭蓋骨の上に立っている女、蓮夜は欠伸を漏らした。

蓮夜は頭をぽりぽりと描いた後、腰と肩を回すと懐から白い紙を取り出して、血だまりの中に放り投げた。


「『アカガミ』参上ってね」


くすり、と妖艶な笑みを浮かべた蓮夜は、鉄臭い匂いが充満した部屋の小窓から飛び降り、姿を消した。

白が赤に染まりきった、赤い紙だけを残して。











カラカラ―――――…

「ちっかれったよー」


某新宿高級マンション最上階。

蓮夜はへろへろと床に倒れ込んだ。


「お疲れ、血塗れで来た事は許してあげるからせめていい加減窓から家に入るのは止めてくれるかな」


仕事用デスクの椅子に座ったまま、情報屋、折原臨也は苦笑しながら窓の方にくるりと振り返った。


「えぇー…だってインターフォン押すのとか面倒臭いし」

「だってじゃないよ全く…」


蓮夜は血生臭い靴をベランダに脱ぎ捨て、窓をカラリと閉めた。

ずるずると床を這い、ソファーにたどり着くと、何の躊躇いもなく寝転んだ。


「臨也、ほーしゅーきんは?」


蓮夜はひらひらと手を広げて揺らした。どうやら催促の様だ。


「はいはい、これが今回のクライアントからの料金。250万、きっちり揃ってたよ」


臨也はデスクの下から取り出した黒いアタッシュケースをデスクの上に置いた。


「数えたの?」

「まぁ一応ね、」

「臨也がお金を数えたら、数枚くらい無くなってそう。後で自分でも数えよー」

「酷いなぁ」


くすくす、と二人は笑った。

臨也が徐に椅子から立ち上がる。向かう先はソファーの様だ。


ボフッ――――…

「ぶわっ」


臨也はソファーに乗っていた白い大きめのタオルを、蓮夜の顔に投げた。


「何すんのよーう」


蓮夜は人差し指と親指でタオルを掴んで持ち上げ、その隙間から臨也の顔を見た。


「お風呂、貸したげるから入ってきたら?服も洗濯してあげるよ」

「のわっ、と」


次に飛んで来た臨也のTシャツはキャッチした蓮夜はのそり、と起き上がった。


「ホントに?ありがとー臨也」

「はいはい、早く入って来な」

「うん」


とたとたと音を立てて、蓮夜はバスルームに消えて行った。






「ほんと…昔から世話が焼ける」



20100810.林田







drrr!! 
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