池袋某高級マンション。
ガチャリ―――…
白衣を着た青年が血生臭さを纏った風体で部屋から出て来た。
静雄は即座に青年に駆け寄る。
「おい新羅、あいつ大丈夫なのか…?」
新羅と呼ばれた白衣の青年は、いつになく訝しげな目線を静雄に投げ付けた。
「大丈夫だけど……静雄、君あの子何処で拾ったの?」
「いや、何処でっつーか…降って来たんだ」
「降ってきた?!」
「ビルからな」
「はぁ………………」
茫然自失しそうだよ…と新羅が額に手を当てながら呆れたと言わんばかりに呟く。
「新羅、あいつ知ってんのか?」
その言葉を聞いた瞬間、新羅は重苦しい溜息を吐いた。
「決して知りたくて知り合った訳ではないんだけどね…いや別にあの子が面倒臭いんじゃなくて…あの子が傷付いたとなれば、絶対アイツが飛んで来るんだよ…」
「アイツ…?」
静雄が眉を潜めて新羅に問い掛けた時だった。
ガチャ……―――
「しーんらさーん………」
リビングのドアから、か細い声が響いた。
「蓮夜ちゃん?!まだ起きちゃ駄目だってば!」
――…蓮夜?
新羅は取り敢えず美人、こと蓮夜をソファーに座らせた。
「いやー…すみませんお世話になっちゃって」
「いや、いいよ。でも君ともあろう者が肩を銃撃されるなんて、どうしたんだい?」
「あー…まぁ、ちょっと」
――…つか…銃撃…?
静雄は全くついて行けない会話にしかめっ面だ。それに気付いた蓮夜がふと静雄の方に目をやり、頭を下げた。
「ありがとうございました。貴方が居なければ恐らく私は今頃ミンチでした。本当にありがとうございます」
――…ミンチって…
静雄は、心の中でツッこんだ言葉達をとりあえず飲み込み、普通に会話をする事にした。
「いや、別にいいんだけどよ…」
「時に貴方は…平和島静雄さんとお見受けしますが」
「あ?あぁ…そうだが…」
ピンポーン―――…
静雄の何で知ってるんだ?という言葉は、リビングに響いたインターホンの音に掻き消された。
それと共に、蓮夜と新羅の顔が、さぁっと青褪めた。
「あちゃー…遅かったか」
「静雄…、頼むから部屋壊さないでね…」
「…どういう事だ?」
そんな俺の疑問も、リビングの扉が開いた瞬間、理解した。
ガチャリ――…
「邪魔するよ新羅。…蓮夜」
「臨也…」
20100825.林田