「もしもし、…あぁ。それはそれは。」

私はがちゃり、と受話器を置いて、二人の少女を見た。
言わずもがな、先刻見つけた行方不明の、東サヨリと西リンコだった。

「お母さん、意識を取り戻したそうだ。」

とりあえず、西リンコに先ほどの電話の報告をした。すると西リンコはホッとすると言うより、より怯えた様子で視線を泳がせながら、自らのくせっ毛を弄りだした。
それも仕方がないだろう。

警察の方では、あらかた事件の内容は把握出来ている。
西リンコの家庭事情や、その母が誰に襲われたのかも、どうして西リンコが行方不明になっていたのか、も。把握出来ているのだ。
なのに、東サヨリというこの少女に関しては、何かおかしい。

まずこの少女が東サヨリというのは間違いないのだ。
それは学校から提供された写真や、書類と見比べたら明らかなのだ。

しかし、彼女は自分が「東サヨリ」であることを否定した。さも、自分が「西リンコ」であるかのように…。

ちらっと視線をうつすと東サヨリはぽたぽたと涙を流してぼんやりとしていた。
これは私たち警察には手に負えない問題らしかった。

私は昔ながらの電話に手をかけて、精神科のある病院の番号を押した。














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