そこから、私たちは知らない街中をひたすらに散策した。
雑貨屋さんでお揃いのキーホルダーを買ったり、おしゃれなカフェに入って少し休んだり。とにかく穏やかだった。
心地いい日差しに目を細めるサヨちゃんに、私はぽつりと溢した。

「ずっと、こういう日が続けばいい。」

それは、心の奥からの本音だった。このまま、何も無かったみたいに、過去を消して、一緒にずっといれたらいい。
そんなことを思って出た言葉だった。サヨちゃんの方を見て、少し笑ってみる。
サヨちゃんは、何故かとても泣きそうな顔で、私を見て、すぐに俯いた。

「続けばいいね。本当に、ずっと。」

サヨちゃんの言葉は水気を含んでいて、それは泣く前の声に似ていた。

「サヨちゃん、泣い」

サヨちゃん、泣いているの。
そう聞こうとした瞬間、後ろから誰かに肩を叩かれた。
一瞬、そんなわけないのに、お母さんかと思って氷漬けにされたみたいに体中ががたがたと震えた。

「…君たち、東サヨリちゃんと西リンコちゃんだね。」

青い制服、青い帽子。黒い帽子のつばから覗く鋭い目付きに、射ぬかれてしまった。逃げたいのに、本能も理性も逃げたいと思っているのに、体だけがその意に反していた。
警察だった。
見つかったのだ。
見つかったのだ、こんなにも早く。
私は血の気の引いた唇を震わせて、まだ捕まっていない少女の名を呼ぼうとした。早く逃げて。と。
しかし、それは私の肩を掴んだ警察によって阻まれた。

「君はサヨリちゃんで、間違いないね。署まで来てもらうよ。大丈夫、リンコちゃんも一緒に来てもらうからね。」

さも優しげに狐をえがくその警察の瞳は真っすぐに「私」を見ていた。

「私」を「サヨリちゃん」と呼んだのだった。














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