「…なにがあったの?」

優しい声で私を撫でるように包みこむ。真友里はまだ泣きそうな目をしていた。
私はしばらく口をぱくぱくしてから、昨日のことを話し始めた。
一度は止まったはずの涙は再びたらたら頬を伝った。ねぇ真友里、私はどうすればいい?

「…みやこ、みやこ。」

真友里は真面目な顔つきで私の名前を二回呼んだ。いつだってそうだ、真友里は大事なことを言うときは私の名を二回噛み締めるように呼ぶ。ずっとそうだ。

「それは、とても駄目だよ。」

なぜか真友里の頬にもたらたらとなま暖かそうな水が垂れていた。真友里は泣きながら続ける。

「確かに、中学の頃とは違うようになる、っていうのには私は反対しなかったよ。それで泣かなくて済むなら「美也子」じゃなくても良いって。でも、」

中学の頃の制服の重みがずしりとのしかかったような気がした。過去に捕われて、逃げられないような、そんな気持ちだった。
とどめをさされたくない、逃げ出したい。と思うも真友里のたらたら流れる涙を見てしまうと動けなくなってしまう。

「泣くなら、同じ…じゃん…!」

悲痛に満ちた声を聞き、やっぱり変われなかったんだ、と確信して目を閉じた。心に突き刺さった言葉はきっとずっと抜けない。

「真友里、私、駄目なんだよ。きっと何になっても…どんだけ自分を変えても上手く、上手く出来ないの…っ」

ずるずると心の表面が剥げて、美也子が顔を出す。ただの上手く生きれない平凡な少女を目の前の彼女は強く抱き締めた。
私も手をまわして彼女を離さないようにしっかりと掴んだ。

真友里の心音が響いて心地よかった。
二人分の涙の匂いを押しつけ合うようにしばらくそうしていたいと思った。














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