5月6日
私たちはただ逃げた。
足ががくがくと震えても、一瞬たりとも同じところにいるのは嫌だった。
サヨちゃんの足も細かく震えていたのは見ないふりをした。
そして、お母さんは死んだのだろうか。
サヨちゃんの振り回したバッドにはきっとサヨちゃんの指紋、汗、その他もろもろがついてしまっているのに、そのまま飛び出してきてしまった。
見つかったら、サヨちゃんには会えなくなってしまうのだろう。
だから、逃げなきゃ。
少しでも遠くに逃げなきゃ。
今、バスの中でこれを書いている。
サヨちゃんは緊張の糸がゆるんだのかぐぅぐぅ隣で寝ている。よだれも垂れている。せっかくの綺麗な顔が台無しだ。
その柔らかいカールのかかった癖っ毛を押さえるように私はサヨちゃんの髪を撫でた。
私もなんだか眠たくなったので、少し眠ることにする。
バス内にかかっている時計に目をやると、もう五時ちかくだった。そう言えば空もどことなく明るくなってきていた。
…どうかいつまでも、サヨちゃんと逃げれますように。
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