どたどたと階段を駆け上がってくる音がする。これはきっと絶対真友里だ。
私の部屋の前で足音がぴたりとやんだ。

「みやこ、お見舞いに来たんだけどね。」

「…うん。」

私が返事をすると、入ってもいいかな?とドアノブを握るかすかな音。また、うん。と返すと真友里は申し訳なさそうに入ってきた。

なんであんたが泣きそうな顔してんのバカ。

「みやこぉ、昨日さ…」

「うん。」

「一緒帰れなくて残念でさ。私のせいだけどさ。」

「うん。」

少し沈黙が続いて真友里が鼻をすすり、はぁ、と息を吐き出した。
真友里にはもう、ばれているのだろうか。
昨日あったことも今日休んだ真意も私のキャラのこともそれが崩れたことも。
全部ばれているのだろうか。それならそれでいいけれど。


「…昨日、さ。もしかしてなんかあったの?」

全部話したら楽になれるかな。
真友里は相変わらず泣きそうな顔で私を見る。私のが泣きたいよバカ。

「なんか、前、みたいな嫌な感じしてね?違うなら良いんだけど…いや体調悪いのは全然良くないんだけど、えっとね…。」

やっぱり真友里は何かを察していたようで、拙い話し方で、でも必死に私に伝えようとしていた。

「なんか、あったの?」

真友里がガラスの何かに触れるように私の頭に手をおいて、ゆっくり撫でた。優しい声はあまりにも昔と変わらないままで。

思わず涙が溢れて、私は情けない声を出して真友里に抱きついた。

「真友里ぃ、真友里ぃ…!」

「…ごめんね、みやこ、ごめんね。」

守ってあげれなくて、と言う真友里の声も、真友里にすがる私の声も、昔のままだった。

私たちは結局は、変われなかったんだ。














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