サヨちゃんはにやりといたずらっ子のように笑ってドアの前に立っていた。深夜二時。迎えに来たよと手を引く彼女はまるで王子様のようでもあった。私の、小さな神様。

「…あ、サヨちゃん、ちょっと待って。忘れ物したみたい。ちょっと待ってて?」

「え…うん、分かった。すぐだよね?」

名残惜しそうに私の手を離す私より小さい手を両手で包んで、目を合わせて、すぐだよ。と微笑めば彼女は安心したように眉を下げてにこりと笑った。

私は彼女を残してぼろっちいアパートの一部屋にまた足を踏み入れた。お母さんが起きないよう、電気は消したまま奥へ奥へ進む。
やっと事実上私の部屋のトイレに着いた。そこに隠しておいた私のお小遣い何年分かを凝縮した二組のお守りをとる。
無病息災を謳うそれらは小さな鈴を一回ちりんと鳴らして私の手のひらの中で大人しくなった。それらを握りしめたら勇気が込み上げてきた。
よし、私にはサヨちゃんが待ってる。

くるりと回転して玄関へ迎おうとした、とき

すぐ後ろにお母さんがいた。
私は心臓が早く脈うつのを感じながら、なにかを諦めた。














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