「サヨちゃん、この二匹は、親子だったのかなぁ…?」
嗚咽のせいで途切れ途切れに言葉が飛んだ。さぁ、どうだろうね。とサヨちゃんは首をかしげて苦笑した。
殺した本人に聞くのも滑稽な話だ、と私は少し可笑しくなった。
「サヨちゃん、ねぇ、私、ね。サヨちゃんを助けたいよ。」
この勢いで吐き出してしまおうと思った。全部。涙と嗚咽と本音。全部出してしまえば楽になれるだろうとどこかで期待していたんだと思う。むしろ、それしか無いのだと。私の手段は。
「わ、たしを助ける?どういうことかな?」
本当に分からない、と言うように眉を下げて私の顔を覗きこむ。私は目を合わせたら負けてしまいそうな気がして、顔をそらした。何に負けるのかなんてことは分からないけど。
「サヨちゃんは、おかしいの。命を返す、なんて神様以外しちゃいけないんだよ。殺すなんて、私たちにはその権利は、与えられてないんだよ。地球に乗らない命も、無いの。浄化される日なんてのも、来ないの!どんなに待っても!」
ぼろぼろと涙が土に落ちる。全部、世界の悪いことが全部浄化される日なんて来ないの。もう一度繰り返した。泣かないように唇を噛んでみようにも、顎ががくがく震えてどうしようもなかった。
「リンコちゃん、来るよ。絶対、来る。」
「来ないよ!そんな、そんな都合の良い日、来ない!」
来るはず無い。この痣が消えるようなそんな日、来るはずが無いの。来たら奇跡としか言えないような、都合の良い日。
来ない、来ないの、ずっと祈ってた、そんな日が来ること。でも来なかった。だから、だから…!
「リンコちゃん、リンコちゃん!しっかりして、落ち着いて。」
ぎゅうっと抱きしめられてサヨちゃんの心音が聞こえた。なんだ、この子でも私と同じ心臓の音、出せるのか。そう思ったら少し、落ち着いた。背中をその心音と同じリズムで軽く叩く。叫び続けて喉が熱いのが分かった。
深呼吸をして、サヨちゃんの肩に顎を置いた。
サヨちゃん、でもね、本当にそんな日、来ないの。来ないんだよ。
落ち着いてもなお止まらない涙がサヨちゃんの肩を濡らした。私の変わらない思いも、また二人の鼓膜を揺らす。サヨちゃんは鼻をすすって、私がその日を連れて来るよ。と優しく呟いた。
≪ ≫