冬が終わり、春が来た。
桜の花びらがいっせいに開きだす頃だった。

転校生が来るんだと、どこからか聞きつけたクラスメートたちが教室で騒いでいた。
噂によると、その転校生は東サヨリという名前らしい。

そんな話をしているうちにチャイムが鳴り、ガラッとドアが開いた。
その音にみんなの肩はぴくりと跳ねた。

「なんだなんだ、お前ら。そんなにかしこまって。」

担任がだらしなく入って来た。
そしてその後ろに彼女はひっそりと隠れるように立っていた。

「まぁ、どうせ東のことだろうよ…。転校生だ。東…サヨリ?だ。」

頭をがしがしと掻きながら東サヨリに確認するように聞く担任。
その言葉に頷き、彼女は私たちの方を向き直った。

「東サヨリです。よろしくお願いします。」

東サヨリはとけそびれた雪のように白い肌をした女の子だった。美しかった。
彼女は一礼して、微笑む。
そのとき男子たちの跳ね上がる心音が聞こえた気がした。

彼女はそのまま私の隣の空席に座った。
そして私ににこりと微笑んで

「よろしくね、お名前は?」

と言った。

「西リンコ。よろしく、東さん。」

私も負けずに良い笑顔で答えた。
なんとなく、東サヨリの顔に見覚えがあるような気がした。

そんな春だった。














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