5月4日
学校で、サヨちゃんに、今日、あの場所に来て。と言われた。
嫌な予感しかしなかったけど、仕方なく行ってみようと決心した。
本当に行かなきゃ良かった。

リンコちゃん見て見て、と走りよって来たサヨちゃんが手に握っていたものは、孵化しかけたひよこだった。

「ひよこの出来損ないだよー。」

にこにこしながら言うセリフじゃあないな、と頭のどこかで思いながら私は吐いた。
大丈夫?と言いながら背中を擦ってくれたサヨちゃんは本当に心配そうな声で、自分のした行いのせいなどとは微塵も思っていないようだった。

なんでこんなことするの?
吐いたものと一緒にしてでしか言えないようなことを聞いた。
するとサヨちゃんの顔から表情が失せた。一気に暗い声になって、

「これ以上生まれちゃ駄目なの。これ以上は地球の上に乗らないの。乗れないの。」

そして切なそうな表情が滲んだ。
まるで彼女一人が世界の終わりにいるみたいだった。それ、には背筋に虫が這っているような違和感があった。

サヨちゃんは孵化しかけたひよこを近くの公園に生えている木の根元に埋めて、お墓を立てた。その横には、にわとりさん、と書かれた墓標があった。
恐らく、昨日の鶏だろうと勝手に推察した。

「命を奪うんじゃあないよ、返すの。空にね。」

にこり、とこちらを向いて言うその言葉は正当なもののような気がしてしまって。
私は、少し足に力を入れて立った。
そうしないとサヨちゃんの世界に引きずり込まれてしまいそうだった。














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