栞が言った言葉を頭の中で反芻した。夢みたいだ、と思った。
無論、悪い意味で。

私は確かに何回かは栞が好きとか、栞が縛られてたら興奮するとか、まぁその、ごにょごょ…。
いや、確かに好きではあるんだけどそれはその場のノリとか見栄とかでありましてね?
別に本当に付き合いたいとか、そういうんじゃなくて。
そういうの、栞は察してくれてると思ってたんだけど。

だけど、今日の栞は少しおかしい。
何かを試すような口調も、少し震えた声も、全部おかしい。
おかしいけど、今、栞の方を見てしまえば何かが崩れるような気がした。

ねぇ、と急かすような声が上がる。どうすれば良いのか、逃げ道がなさすぎる。
私の設定では私は、みやこは、バイで、少し性癖がおかしくて、クールで、こんなことには動じない…あれ、設定ってなんだ?

「いいよ、付き合う?」

頭の中、こんがらがったまんま。
ただ、やっぱり設定には忠実でいたくて、今まで造ってきたみやこを壊したくなくて。溢した言葉は取り戻せなかった。

本当は、バイじゃない。特別な性癖も持ってない、クールなんかじゃない。
平々凡々の、普通の女。
それをどうしても隠したかった。その一心で。
真友里、私どうしたらいいの?
咄嗟に出てきたのはやっぱり真友里で。栞の言う通り、私はまだ真友里離れ出来てない、ただの中学生のまま。

あの時から私だけ、時が止まったままなの。ねぇ、真友里。














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