放課後になれば、夕焼けが綺麗で、少し、心が洗われるようだ。
満点のミニテストをぴらり、翻してファイルに入れる。今日もいつもと変わらず、安全第一な高校生活でした。

「栞、もう帰る?」

後ろからみやこの声が飛んできた。
うん、と返事をすると、駅まで一緒に行こう、と誘われた。
微笑んで頷けばみやこは嬉しそうに横に並んだ。愛犬のようだ。とふと思った。

「あ、でも真友里は?」

「いやぁ、あの子は追試だから。」

からからと笑いだす。それを聞いて、また胸が嫌な音を立てた。
羨ましい。

「ていうか聞いてー!今日その真友里がさぁ」

妬ましい。なんて思いたくないのに、笑顔の作り方がぎこちないのが自分でもよく分かった。

「そんで真友里がね、」

「本当にみやこは真友里が好きだねぇ。」

嫌味に満ち満ちた言葉が思わず口をついて出た。みやこが目を丸くする。
あぁ、言ってしまった。
私がこれまで上手くこなしてきていたものが崩れる音、音、音。
もう、限界だったのか。

「え?まぁ、腐れ縁だけど。」

声色が今さっきより低い。
私は思わず顔を伏せる。

「腐れ縁かぁ。本当に、仲が良さそうで。良いなぁ。」

それでも口はから回る。

「なんか、本当に、付き合ってるみたいでさぁ。」

口の端が釣り上がる。なんて嫌な女だ、私は。
なにそれ、と小さく横から聞こえた。声が震えていた。

「私はたしかに、バイだけど。真友里は…真友里はそういうんじゃないから。」

顔を伏せたまま私は小さく息を吸った。また、みやこの強がりだ、と。
本当はバイなんかじゃないのにさぁ。
薄ら笑いは顔からはがれなかった。

「じゃあ、本当にバイならさ」

私と付き合ってみる?
吐き出す毒に、みやこはどんな顔をしているだろうか。ただ、二人のローファーの音が響く。

私こそバイでもビアンでもないくせにね。














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