それは何千万もするはずだった宝石の傷を見つけてしまった鑑定士の気持ちにもよく似ていた。
嬉しいような、悲しいような。

私は日記帳を閉じて頭を抱えた。どうすれば良いのかと。

「リンコちゃんリンコちゃん、このことは、しぃーね。」

そう言ってサヨちゃんは口元に人差し指を当てた。と思う。視界の端で見ていた。この時も、サヨちゃんは笑っていたのだろうか。
言われずとも誰にも言えまい、こんなこと。

私はまだ子どもだ。
こんな子どもに狂人、つまりはサヨちゃんを救うもしくは裁くことなど出来まいよ。
所詮それを言い訳にして逃げているだけかもしれないけれど。

狂人だって子どもなんだから。

「どうすれば良いんだよ…。」

抱えた頭の重さすら嫌になってきて、ずるずると机の上で行き倒れたように。髪がぐしゃぐしゃと騒いだ。今はそんなこと気にしてられない。

警察にいっても、少しお咎めをくらうだけだろう。
サヨちゃんの両親は彼女の狂気に気付いているだろうか。
気付いて病院に行って治してもらうのが手っ取り早いのに。手遅れになる前にどうか、どうか。

サヨちゃんのあの笑顔が忘れられないのです。
あの天使のようで悪魔のような微笑みが。
頭からこびり付いてとれないのです。まるで傷がついたよう。
誰かあの子を救ってください。
誰かあの子に気付いてください。

祈ったら、叶うのだろうか。














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