5月3日
サヨちゃんは学校では普通だ。
今日も昨日や一昨日と何も変わらないサヨちゃんだった。
けれど私は知っている。サヨちゃんが普通じゃないことを。

今日、またサヨちゃんを帰り道で見かけた。また養鶏場に行くのだろうか、と私は嫌な予感に身を震わせながら後を追いかけた。

やはり養鶏場だった。

サヨちゃんはしばらく昨日と同じように鶏と話していた。
おかしかった。何度見ても。

少しばかり耳をすまして聞いてみると話の内容が少し聞こえた。
それは世界の終わり、だとか人間の末路、だとかに聞こえた。
私は耳をすますのをやめた。

「やっぱりきらいだ。こんなの。」

耳をすまさなくてもはっきりと聞こえたその声は驚くくらい低かった。
そしてサヨちゃんは鶏の首をぎゅうっと締め出した。鶏が苦しげに助けを呼ぶような声で鳴いていた。だけどその声もじきに聞こえなくなった。
だらんと下がった首に私はおもわず小さな悲鳴を上げた。

サヨちゃんがこっちを向いた。目が合った。
咄嗟に、逃げなければ。と思った。だが私は座ったまま動けなかった。腰が抜けていた。
サヨちゃんはそんな私を見つめて、狼狽することもなく、かくれんぼで見つけられたかのようにへらっと笑った。

「見つかっちゃった。」

あぁサヨちゃん。その天使のような笑顔であなたは生き物を殺してしまうのですね。と、思った。
サヨちゃんの顔には罪悪感などまるで無かった。














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