教室のドアを開ける。
その瞬間に何かが私目がけて跳んだ。

「栞ぃいい!おっはよう!」

真友里だった。
その勢いのまま私に抱きつく。
いや、抱きつくと言うよりはタックルという表現の方が正しかったかもしれない。
あまりに強い衝撃から私はよろけた。
視界の端からかろうじて見えた教室にはみやこもいた。
みやこは私たちの様子を見て、口の端だけを上げてにやにやと笑っていた。
そうするといつもは大きな目がすぅーっと細くなって、実年齢より大人っぽく見える。

「いたた…朝から真友里は元気だねぇ。」

「うん!元気だよぉー、うぇえい。」

私の顔面と真友里の顔面の距離、約三十センチ。
その距離で真友里はとびきりの変顔をしてみせた。お世辞にも花の女子高生とは言い難いほどのそれだった。
私は思わず吹き出す。

「いやぁー、栞きったなぁい!」

顔をしかめてまた変な顔をする。
どっちがかと言いたくなった。

「みやこぉー。栞がきたないよう。」

とてとてと歩きたての赤子のようにみやこの方に歩いていく。

「多分、さっきのあんたの顔のがきたなかったと思うよ?」

みやこがにやにやしたまま軽口をたたく。
私はよく言った。と手を叩いてみせた。
すると真友里は「見てないくせに!それとも今見てみるか?」とまた変な顔をしたのだろう。みやこがけらけらと笑いだした。

「どうだ!まいったか!」

どこか誇らしげな真友里は腕を組んで、ふんっと鼻を鳴らした。














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