彼女、東サヨリはあっという間にクラスに溶け込んだ。
東サヨリは優しく、美しく、頭が良く、運動も出来た。
下級生にも慕われるようになった。
私たちは季節外れのクリスマスプレゼントをもらった気分だった。
小学生最後の春に、最高のサプライズだと。
男子は特にそう思っただろう。

「リンコちゃん、今日の算数のテストどうだった?私駄目かもしんなーい。」

困ったように眉をハの字にして笑う。彼女は本当に美しい。
あまり接点のない私にもこうやって話しかけてくれるところも、良いところの一つではないか。

「そんなこと言って、東さんまた百点とるんでしょう。」

「そんな!ひどいリンコちゃん。私が本当に図形駄目なの知ってるくせにぃ。」

今度は頬を膨らませて怒った素振りをした。
確かに彼女は図形だけは苦手のようだった。しかしその「苦手」は私たちの「普通」なわけだから結局は良い点数をとるに決まっているのだ、うん。

「あ、そういえばさ、私はリンコちゃんって呼んでるのにリンコちゃんは私のこと東さんって呼ぶよね。」

思い出したように目をぱちぱちさせる。

「それだとなんか不平等な感じじゃない?私のことも名前で呼んでよ。」

少し強引だが、そんなところもみんなから頼られる要因なんだろう。
私は少し困ってしまったのだけれど。
私は、うーん、と唸って、「サヨちゃん」とぼそり。

すると彼女は目をきらきら輝かせて「サヨちゃん!」と復唱した。
そして、その呼び方はリンコちゃんだけ。特権だね。とまた笑った。














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