treasure | ナノ
 
宝月さんより
 


二週間と少しの間、黄瀬君に会っていない。別に、喧嘩をしたわけでも、彼を避けている訳でもないし、会いたくない訳でもないのだが…。近いとはいえ他県、しかもお互い部活が忙しいから、なかなか会えるはずもなくて。

(会いたい、)

そう思って携帯を握りしめた直後に黄瀬君から「明日会いたい」と連絡がきて、僕がどれだけ喜んだか。待ち合わせ場所に一時間以上前に着いてしまうほどに浮かれてしまって、我ながら女々しいなとため息を吐いた。



「黒子っち!」



後ろから聞こえる自分を呼ぶ声に振り向くと、紙袋をぶら下げた黄瀬君が、左手をぶんぶんと振ってこちらに走ってくるのが見えた。久しぶりに見る彼は、相変わらず格好良かった。



「走ったら転けますよ。」

「もうっ、子どもじゃないんスから大丈夫っスよー。」



前言撤回。格好良いのではなく、可愛いの間違いだった。頬をぷくっと膨らませて言う姿は、子どもみたいだと思うのだが、あえて言わないでおく。



「それで、用事は何ですか?」



何か僕に話があるのでしょう、とそう問いかけると、「ああ」と黄瀬君は紙袋の中から少し大きめの箱を取り出した。黒を基調としたその箱には、金字でシンプルな模様が描かれており、それは彼らしくとてもオシャレだとは思うものの、そういうことに疎い僕には中身の想像がつかなかった。



「それ、何ですか?」

「んー、何だと思う?」



気になって質問すれば、逆に問いかけられて、少しむっとする。教えてくれたっていいのにと思いつつ、その箱に近づいてみると、ふわりと香った甘い匂いに、答えはすんなりと出てきた。



「チョコレート…。」

「正解っス!」



ぱかっと開いた箱の中には、外箱と同じく見た目がとても綺麗なチョコレートが並んでいた。色とりどりのそれは、一粒一粒に丁寧な細工が施されており、先日テレビに映っていた高級チョコレート店の物とそっくりだった。



「高そうですね。」

「…まぁ、安くはないっスね。」



思った事を口にすれば、黄瀬君は苦笑いしながらチョコレートを一粒摘む。



「そんな事より、ほら。黒子っち、あーん。」

「もしかして、僕を呼び出したのはこれの為ですか。」



もしかしなくても、多分そうなのだろう。ただ話をするだけならば、お互い携帯電話をもっているのだから、わざわざキツい練習の後に呼び出したりはしない。

「まぁ、うん、そうなんっスけど…、そうじゃなくて。」

「?」



これを渡す以外に、まだあるのだろうか。僕が首を傾げると、黄瀬君は困ったように笑った。



「これをあげるってのは口実で、ただ、黒子っちに会いたくて」



迷惑だった?という言葉に体がカっと熱くなった。…迷惑どころか嬉しい。口に出さずにそう思うと、僕は首を横に振った。

「迷惑、ではないです。」

「良かった。」

僕の素直じゃない返事にさえ、嬉しそうに反応する黄瀬君が、やっぱり好きだ。せめてと思い、僕にと差し出された手をそっと握り、黄瀬君の体温で少し溶けてしまったチョコレートを口に含む。



(苦い、けど甘い)



真っ赤になって驚いている黄瀬君を見て、僕は呟いた。



「僕も、会いたかったです。」




end


→Thank you!
宝月さんから頂きました!
大好きな黄黒です、宝月さんの黄黒はすごくあったかくて、黄瀬くんが黒子っち大好きなのも伝わってくるしその黄瀬くんもちゃんと報われていてこっちまで幸せになります…´///`

相互記念としてリクエストさせて頂いたものだったんですが誕生日の日に頂いて、誕生日まで祝って頂いたみたいで勝手に嬉しかったです、ありがとうございました^//^
これからもよろしくお願いします!