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月に叢雲、花に風 2
 





「っ…ふっ、…ん」 

部屋を宛がわれてすぐ、錠の確認もままならない内に抱き抱えていた身体を布団の上に自分の身体もろとも横たえた。
そのまま唇を奪い、先刻にも散々味わったばかりの口腔を蹂躙する。 

「っは…」 

「っぅん、っふ…ぁ」 

一進が口づけに夢中になっている間に、性急に着物の帯を解く。 
一進の肌を覆い隠す邪魔な薄布を無遠慮に剥ぎ取ると、ほんの弱い抵抗を胸に受けて唇を解放する。 

「…嫌か」 

「違…っ、恥ずかし、くて…っ」 

「ああ…悪りいな、これからもっと…恥ずかしいことすっかもしんねえけど」 

言いながら手の平でゆったりと、熱くなった下肢を擦りあげる。 
すると顔を隠すように交差された一進の腕を、片手でひとつに纏めて頭上に留めた。 
なにもかもを晒され、隠す手段さえ奪われた一進はいやいやをするように首を振り、その拍子に眦から水滴が散る。 

「!っ…や、こた…」 

「隠されっと余計興奮しちまう」 

困るだろ?と色っぽく微笑みながら囁き入れれば、耳朶に赤みが射した。 

「んっ…く、…ふぁっ」 

ちゅ、ちゅ、と音を立てながら啄むような口づけを落とし、片手で一進の幼い花芯を緩く擦りあげればまだ身につけたままの下着にじわりと染みが広がり始める。 
それを見て、すぐに下着も取り払った。 

「!っや、いやぁ…っ、やめ…っ、ひ、ぅ」 

「大丈夫、大丈夫だから…な?」 

「んーっ…、っふ、ぁ…」 

「気持ちいいだろ…?」 

耳元で意地悪くそう問うと一進はただ素直にこくんと頷く。苦しそうな表情の中にも確かな悦楽を見つけて、己の中心が更に固さを増すのがわかった。 

「っあ、…あっ、ん…っ」 

透明な先走りで濡れそぼったものを、その滑りを借りて扱くと手の中でぐちゅぐちゅと粘着質な水音が響く。自分の手の動きにあわせて揺れる一進の細い腰や子供特有の高い声で紡がれる喘ぎが狐太郎の興奮をひどく煽った。 
痛いくらいに張り詰めたものは少しでも触れたら今にも弾けてしまいそうで、自然と眉間に力が入る。 

「っ、てぇ…」 

「!こ、たろう…どの…?っ、どうか…っ」 

眉を顰めた狐太郎を心配して一進もまた柳眉を寄せる。しかしその表情にすら今は欲情を抑え切れず、頭上に留めていた一進の手を己の屹立に導いた。 

「…っ!…あ、っ」 

「…触ってくんねえか、…一進…?」 

「!で、でも…っ」 

一進のものとは比べものにならない質量のそれに初めて触れ、快感に潤んでいた瞳はわずかに畏怖の色を帯びる。 
しかし乞うような瞳で真っすぐに見つめれば、恐る恐るといった手つきながらも触れてくれた。 
覚束ない手つきはとても巧みとは言えないけれど、懸命な一進の様子を見ていれば否応なしにそこは質量を増す。 

「っく…」 

「っあ…ひ…ぁっ、ん」 

トロトロと先走りを流す性器を手の中で弄ぶと一進の身体が快感に震え、狐太郎のものに添えられた手が止まる。 

「やっ、…ぁ!」 

ただ上下に動いていただけの拙い愛撫だったが、それさえなくなるとやはり辛い。 
奉仕するだけでも一進の乱れる姿を存分に堪能できて、それだけでも身体は高ぶる。しかし狐太郎とて聖人君子なわけでもあるまいし、自分の快感を追わずにはいられなかった。 
一進の高ぶりに絡めていた手を解き、添えられたままの彼の手の上から自分のものを握りこむ。 

「!っ…や、…ぅっ」 

「やじゃねえだろ…?」 

「んっ…」 

耳殻を食んで低く囁き入れると、仄朱く染まった身体がひくりと揺れる。同時に腹の間で揺れていた一進の屹立からまた透明な粘液が溢れて互いの腹を汚した。 

「耳弱えのか…」 

「ちが…あっ、…や」 

しきりに首を振る一進にくすりと笑みを零して自分のものと一緒に握りこんだ一進の手を強引に動かした。 
初めて手に直接感じる他人の生々しい感触に頼りなく眉尻を下げ、唇を震わせる。 

「っ、あ…やだ…っ、や、…」 

「っ…ぁ、く…」 

「くるし…っ、は…ぅっ」 

快感に潤んだ目を懇願するように向けられて一進の下肢に視線を移せば、狐太郎のものを触って感じたのか反り返った分身がまるで誘うかのように揺れていた。 
粘ついた液体を纏ってぬるぬると光りを反射する様は壮絶に淫靡で、つい生唾を飲み込む。 

「あっ、も…いきた…っ、」 

いきたい、と涙の滲む声音で言いながら伸び上がって自身の唇を狐太郎のそれに押し付ける、たったそれだけの不器用な行為が堪らなくて、薄く開いた唇の隙間からちろちろと覗く舌に誘われるように淡い色に食らいついた。 

「…!っふぁ、ん…っ」 

口づけに夢中になる一進の花芯を不意に掴むと手中に納めたそれが小さく弾む。 

「あ、…出ちゃ…っ、やあっ…」 

「いいよ、受け止めてやっから…出せ、な」 

できるだけ優しい声音を心掛け口づけを顔中に降らせる。 

「…っぁ、っ、…ひぁあっ」 

親指の爪が先端を抉った瞬間、白濁が二人の腹を濡らした。 
温かい液体が滴る感覚が不思議と不快ではなく、それを僅か指で掬って口に含むと青い臭いが鼻腔をつく。 

「…は、っ」 

弛緩した身体が蒲団の上に隠すものなく横たわる。しかし、狐太郎の指が一進の秘めた場所を探ろうと入り口に押し当てられた瞬間、弛緩しきっていた身体が一瞬にして強張った。 

「!ひ、ゃ…っ」 

「…痛くしねえ、どうしても嫌だって思ったら…っ、殴ってでも止めていいから」 

「っ、ぁ…」 

精一杯のひたむきな、真摯な言葉。 
一進が望まぬことはしないと誓って触れるだけの口づけを落とす。 

「…っ、は…い」 

「辛かったら、言えよ…っ?」 

一進が渾身の力で抱きついてきたのを合図に、忍ばせた指先を狭い後孔に埋め込む。 
きゅうっと快感のせいではなく寄せられた眉を痛ましく見つめながらも、やめることはできなかった。 

「っ、い…ぁっ」 

「息、吐け…っそしたら、少しは楽になるから…」 

「っは…ぁ、は…っふ」 

「そう…上手いな、そのまま…」 

固く閉ざされた秘孔をどうにか蕩かそうと狐太郎は手管を尽くす。己の唾液で濡らした指を挿入し、潤滑油を奥に送り込んではまた唾液を絡めの繰り返し、その合間に一進の顔を見遣るがまだそこに怯えや戸惑いといった感情以外は伺えなかった。 

「っい、…やっァ」 

「一進…っ、一、進…」 

「ぅあっ、あ…ふ」 

一進の後孔は身体の大きさに比例して狭く、小さい。この程度解れただけでは狐太郎のものなど到底挿入りそうになく、狐太郎は挿入する指を二本に増やした。 

「…っや、ぁっ…、っつ」 

苦しげに呻いていた一進が、指先がある一点を掠めた瞬間びくっと背中をしならせた。 

「!っひ、やァあっ!」 

びくっ、びくっと何度か身体を大きく震わせた後狐太郎の背中にしがみついていた手が爪痕を残して滑り落ちる。 

「!…ここか?」 

「やあっ、だめ…っ!ひ、んっ」 

今度こそ快感でぼろぼろと涙をこぼしながら嬌声を上げる一進の、不安と恐怖で力を失っていた幼い性器が再び勃ちあがっていた。 
先端からとろとろと甘い蜜を溢れさせ、無意識なのだろうが腰を揺らめかせる一進はひどく淫らで自身がまた固さを増す。苦悶の表情は消え去り、今の一進は与えられる激しい快感に翻弄されているだけだ。 

「っや、もう…っ、あっ」 

「入れる、ぞ…?いいか…?大丈夫?」 

「あっ、ひ…っはや、く…!」 

その言葉に、箍が外れた。 
指を引き抜き、絡めた唾液と精でどろどろになった場所に己の怒張を宛がう。反射的にひくりと収縮した後孔を強引に割り拓き、腰を進めた。 
ずぷん、と亀頭が飲み込まれる。 

「っあ、っ、ひぅ…っん」 

「痛く、ねえか…っ?」 

締め付けてくる後孔に今にも達してしまいそうなのを必死で堪えながら一進の、汗で額に張り付いた髪を梳く。 

「あ、っん…ぁ、へい、き…っ」 

「わり、…もう、無理だ…っ!」 

「ぇっ、…っひあ、ァぁあっ」 

狐太郎を安心させるみたいに笑う一進がいじらしくて、まるで狐太郎を誘い込むように蠢動する隘路に耐え切れず、そそり立った自身で一進を貫いた。 
凶器のような自身のものが、淡い桃色をした慎ましやかな一進の蕾に突き刺さっている眺めはあまりに淫猥だ。しかしその事実に精神的な欲情を覚えたことに背徳感が襲う。 

「っい、…やあ、あっ…」 

一進が痛みに顔を歪める。 
どうにか痛みを紛らわせようと、勃ち上がった花蘂を扱くと後孔が飲み込んだ狐太郎を締め付ける。 
柔らかな内壁に施される愛撫に性懲りもなく下肢には熱が溜まり一進の中で質量を増した。 

「っひ、ゃあ…どぅっ、して……っ」 

「っ、く…っ」 

身体を拓かれる痛みと、それを上回る頭を蕩かせる快感に身もだえる一進の指が狐太郎の背中を引っ掻く。 
しかし一進の身体に力が入る度に狐太郎の剛直を飲み込んだ場所は収縮を繰り返して、多少の痛みを気にしている余裕はない。 
まだ一度も射精には到っていない狐太郎はそろそろ限界が近く、自分にしがみつく一進を抱きながら耐え切れずに腰を突き上げた。 

「ひっ、やぁ、あぁあっ」 

「っ、…ぁ、くっ」 

挿入に浸る隙もなくそれを塗り込めるように腰を回すと、繋がった場所からぐちゅぐちゅと卑猥な水音が立った。 
根元まで沈めた楔をぎりぎりまで引き抜くと、きつい内壁が逃すまいとするように纏わりついてくる。粘膜がこすれ合う音に交じる悲鳴じみた嬌声は狐太郎の耳にひどく煽情的に響いて、己の中に生まれた烈しい情欲が怖いとさえ思った。これを全て一進にぶつけたら、一進は壊れてしまうんじゃないかと。 

「っや、ァ…!っ、ぁあっ!」 

さっき指で暴かれたある一点を切っ先が擦り上げた瞬間、手の中で一進の高ぶりが弾けた。激しい絶頂に締め付けがきつくなる。 

「っ…、ここ、いいのか…?」 

「ちがっ、ぁ…やあっ」 

「いいんだろ?すげえ…締め付けてくる」

弱々しくも首を振り、狐太郎の言葉を必死に否定する。しかし執拗にそこばかりを突いて乱れる一進を見れば説得力はない。 

「やっ、いやっ…も、へん…に、なっ…!」 

「!っ、…」 

なにも知らない初な身体は過ぎる快楽に耐え切れなくなったのか、もうやめて、と生理的な涙をぼろぼろと零しながら懇願するように唇を押し付けてきた。
しかし言葉とは裏腹に狐太郎のものを離すまいと絡み付いてくる媚肉が包み込んだ雄蘂を絶妙に締め付ける。柔らかな感触ときつすぎるほどの収縮はただ抑え難い快楽しか齎さない。 
その刺激に逆らわず、狐太郎は一進の最奥に熱く濃いものを流しこんだ。 
今はそれにさえ感じてしまうのか、一進は身体を痙攣させ鈴口をひくひくと開閉させた。 

「っ、――…!」 

「ぁ、あ…っは、…っ」 

「…っ、平気か…?一進…」 

「んっ…ぅ、こた、ろ…殿…」 

ずる、と硬度を失ったとはいえ太い楔が引き抜かれる感覚に一進は肌を粟立たせる。 
その拍子に、中に出した狐太郎の精液がどろりと溢れて蒲団に滴り落ちた。 

「ああ、痛いとこねえか…?」 

「おなか…が、」 

「腹痛えのかっ?」 

「ちが…、あの…何か、変な感じが…っ」 

「!…悪りい、中に出しちまったから…」 

そう言って赤く腫れたようになった場所を覗き込むと、途端に一進は顔を真っ赤にして蒲団の横に放ってあった着物で身体を隠してしまった。 
それを見てやっと、とんでもないことをしたと自覚して伸ばした手を引っ込める。 

「っ悪り…!いや、あの、今のはだな」 

「へっ、平気です、私のほうこそ…っすみませぬ…変なことを…」 

「や、悪いのは俺だろ…、あのな、そのままにしとくと…腹壊すから、その…」 

掻き出さなければならないのだと何故かたったそれだけが言い出せず、二人揃ってしばらく赤い顔のまま黙りこむ。 
やることをやっておきながら今更照れることではないと思いつつ、どうにもいたたまれなさが拭えなかった。 

「狐太、郎…殿…、あの…私…」 

「!いいよ、寝ちまえ」 

うとうとしてきた一進を引き寄せて、何も身につけていなかった膝の上に着物を掛けその上に頭を載せて撫でると、すぐに規則正しい寝息が聞こえてきた。 
その寝顔のあどけなさに自嘲の笑みが上る。深く眠ったのを確認してから汗やらなにやらでどろどろになった身体を清め、自らも膝に一進の頭を載せたまま目を閉じた。 





翌朝、組に戻った二人を待ち構えていたのは玄関口に仁王立ちした銀次の姿。 

「…………」 

「…………」 

「…………狐太郎」 

「…………はい」 

「ほどほどにしろ、って言ったよな…?」 

「………すいません」 



この後一週間、一進の与り知らぬところで狐太郎に罰則が下されたのだった。



"一進の半径六尺以内に近付く可からず" 



おわり 




――――――― 
一尺=約30.3p
参考までに。 

eroを書くとたいへん長くなります。えちシーンを短くするというのがどうにもできないらしい…
なのであんまり書かないけどeroは大好きです!`・ω・´