ao-ex | ナノ
 
愛にも色々あるんです!
 






※全体的に下品。バッチコイ!という方のみどうぞ 








「どないしましょう…!」 





「…………幼なじみの情けで一応聞いたるわ、何や」 





「…勃たへんのです…っ!!えっちな本見てもビデオ見ても勃たなくなってもうたんです…!!どないしよう、こんなん奥村くんに知られたら振られてまう…!」 

あまりに絶望感溢れる声に嫌な予感はしつつも聞いてみてやれば案の定、こんなくだらないことはない。 

「…安心しいお前いっつも不能になれとか何とか言われとるやないか、逆に惚れ直されんのと違うか…」 

恋人がEDになって惚れ直す恋人て何やと思いながらもあまりにくだらなさすぎて真面目なフォローも浮かばない。 
こんなのと恋人関係にある燐が勝呂には理解不能だ。一体このエロ魔神のどこがよかったのか一度真面目に聞いてみよう、と勝呂が密かに心に決めたところで頭を抱えてウンウン唸っていた志摩がガバッと顔を起こす。 

「!…な、なんや」 

「坊、俺決めましたわ。素直に奥村くんに打ち明けます…!」 

EDをか。 
開いた口が塞がらないとはこのことか、と不要な経験をさせてくれやがった志摩に恨み言のひとつも言いたかったが、どうにか口をつきそうになった一言だけは飲み込んで、勝呂はもはや付き合いきれなくなった幼なじみを視界から追いやった。 

「好きにしたらええわ…」 





「奥村くん話があるんです」 

「?何だよ、改まって」 

って、ここで切り出すなや阿呆が!! 

焦る勝呂も不思議そうに志摩を見る子猫丸も、まだ帰り支度をしている出雲もしえみも志摩の視界からは既にフェードアウトしているらしい。勝呂とてまさか志摩がここまで阿呆だとは思っていなかった。燐に付き合い云々の話を聞くより先にまず勝呂の方が幼なじみの付き合いを考え直すべきなのか。 

もちろん志摩が不能障害についての話をしようとしていることなど知る由もない燐はただいつもより真剣な表情の志摩を首を傾げて眺めているだけだ。とっととその阿呆を連れて二人で勝手に解決してくれと切に願うが、志摩がその場を動く気配はない。 

―何でその話すんのに真面目腐った表情しとんのやあの阿呆は。 

そろそろ呆れるのにも疲れてきた勝呂はもう知らん、とまったく親切にも二人を待つつもりでいたらしい子猫丸を連れて教室を出た。出雲としえみには気の毒だが、子猫丸だけでも連れ出してやったのだから感謝しろと言ってやりたい。むしろ子猫丸より女の子ふたりを連れ出すべきだったのでは、とふと我に返っても時既に遅く、振り返った先の教室の扉は勢いよく開き件の女の子ふたりが真っ赤な顔をして飛び出してきたところだった。 





「…俺な、インポなってもうてん…!」 

「………………………………………は?」

「だからっ、勃たへんのですよ、えっちな本見てもビデオ見ても、何しても勃たへんくなってもうたんです…!」 

「………………………………………は?」

一体何の冗談だと思ってみても、目の前の志摩の顔は至って真剣そのもの。バターンッと激しく開いて閉じた扉の音も今の志摩の耳には入っていないようだ。

しかしそんなことはいい。 
今何と言った? 

「嫌?インポの彼氏なんかいらん?そうよな、俺が勃たへんかったらえっちでけへんもんな」 

いやそういうことではなくて。 

「お前がんなもんなるわけねえだろ」 

エロ本常備のいつでもどこでも発情しているようなこの男が勃起障害だと?笑わせるな。そんなものはもっと繊細な奴がなるものであってよもや目の前の男など最も遠い所に居るではないか。 
それともあれか、ヤリすぎて腐りでもしたか。そう多くないセックスでは旺盛な青少年の欲求解消には到底及ばない。となればソレは己で始末するしかないわけで、相手のいないその行為に当然ながら際限はないのだ。いくら志摩が右手と仲良くなろうと勝手。 

「ひどいわ、俺意外と繊細なんよ?」 

自ら「意外と」などと言ってしまっている時点で燐の言葉を肯定しているも同義だと何故気付かない。 
しかし今はそんな揚げ足を取っている場合でもなかった。どうやら本気で言っているらしい志摩の顔は悲痛とも思える表情で、いくらそうなったからと言ってそんなこの世の終わりみたいな顔をしなくてもいいだろうにと本気を悟った今でも思ってしまう。 

いや、燐はなったことなどないから気持ちはわからないけれど。 

「…マジで?」 

「マジですよ?」 

「…目ぇ合っただけで勃ったとか言ってたお前が?」 

「そない人を変態みたいに言わんとってくださいよ」 

紛うことなき変態が何を言うか。 
いやいや今はそんなところに突っ込んでいる場合ではない。 

「……」 

「奥村くん?」 

「…わかった」 

「へ、」 

「別に嫌ったりしねえよ、…っ、それ目当てで、付き合ってんじゃねえだろ…」 

不能になったからと言って嫌われると思っている志摩にはさすがにちゃんと言う他になく、照れも羞恥もどうにか抑えこんで付き合い初め以来言っていなかったような気さえする言葉を口にした。頬が熱い。同年代の奴らよりも色白の肌はきっと仄かに朱く染まっているだろうことは目の前の男の表情から容易に想像ができて、そのいたたまれなさに朱くなった頬をぱたぱたと扇いだ。 

「奥村くん…」 

「!はっ!?な、何泣いてんだよアホか!」 

「せやかて、奥村くんがそない嬉しいこと言ってくれはるからやないですか…っ」 

感極まれり、という今にも泣きそうな表情でしがみつくように抱き着いてくる志摩。普段だったら鬱陶しいと一蹴するところだけれど、泣くほど不安だったのかと思えば自然と頬も緩んだ。 
愛されているということだろう、と自分で思ってまたかっと頬に血が上ったけれど抱き着かれている今顔を見られる心配はないと放っておいた。 

「…好いとうよ、奥村くん」 

「はいはい」 

声だけは平然としていられた、と思う。 
燐とは違って毎日のようにすきすき言ってくる志摩の一言で今更なぜこうも照れるのかわからないけれど、涙声の志摩の告白はじわりと鼓膜から脳まで浸透するように響いた。 

「もうわかったって、いいから離…」 

「ええやんか、奥村くんへの愛を再確認しとんのやから」 

と、より強く抱きすくめられては燐にはどうすることもできない。 
無理矢理に引っぺがして怪我をさせてしまうのは本意ではないしまあいいか、と行き場を失った両手を申し訳程度に志摩の背中に回した。 
肩甲骨の目立つ広い背中。志摩の肩越しに見るその隆起に、Tシャツの下に隠れた素肌を思い存外筋肉質な身体にはまだきっと燐の爪痕が生々しく走っているだろうことを想像して、覚えのある場所をゆるくさする。 

「!」 

ぴくりと肩が動いたのにあわせて肩甲骨が波打ち、わずかに腕の力がきつくなった。 

「痛え?」 

痛かったのかと思ってぱっと手を離せば志摩のピンク色の髪が頬をくすぐって、首を横に振ったのだとわかる。 

「男の勲章やん、どってことあらへん」 

「んだそれ、やっぱアホだな志摩」 

お互いにくすくすと笑い合うその振動さえ共有しているみたいだ。 




と、柄にもないことを思ったりもしたのに。 

この男は。 




「!…って、めぇ………!!!」 

「え、……あ?れ?」 


腰のあたりに感じる、固い感触は何だ。 
わかりたくもないけれど、哀しいかなすぐにわかってしまうくらいには深い関係だった。 


「っ…当たってんだよこのクソ野郎がああああああ!!!!」 

不能だなんだと宣う馬鹿を信じた自分が馬鹿だったのだろう。自他共に認めるエロ魔神に下半身の心配などありえない。心配するならむしろ使いすぎの方だ。 

「マジで不能にしてやらあこんの腐れチ○○!!」 

「いやー!!規制入るような言葉言わんといてえな!!」 

「だったら不能にでもなりやがれ!!」 

「すんませんって!いやもうほんま不思議なこともあるもんやね!さっきまでうんともすんともいわへんかったんにね!」 

「じゃあこれはなんだよ!!!」 

「!…わかった俺奥村くんでしか勃たへんくなったんやわ…!」 

ひらめいた、とでも言いたげな大真面目な顔をして言うことがそれか。 
その言葉にわずかでも喜びを感じてしまった自分にも苛立って、先程からわざと擦りつけているとしか思えないそれを膝で蹴りあげてやった。 

「〜〜〜〜〜〜っ!!!??!?!!?」 

悶絶する志摩には塵ほどの憐れみもわかない。 

「っおく、む…ら、く…!!」 

「ざまあみろ」 




――愛? 

ああ確かに愛だろうよ! 



おわり 




――――― 
無駄に長い上に下品ですいません^P^志摩くんが燐でしか勃たないっていうただそれだけが書きたかった。