同じシャンプー使ってるんで。 「なあ、使い魔て具体的に何してはるの?」 「何って…一緒に飯食ったり、マタタビ酒呑んだり…」 「奥村くんマタタビ酒呑むん?!!」 「付き合いだろー」 脇に手を入れて抱き抱えたクロを顔の高さまで持ち上げて、なー?と同意を求めるように首を傾げる奥村くんはそらもう悶え苦しむくらいかわええけど。けどやな。 「猫と晩酌…?」 「あとはー、一緒に風呂入ったりー、昼寝したりー、飯食ったり!なー、クロ!」 『なー!』 「!ふ、風呂……やって…?」 飯食ったりが二度目やったような気もするけど奥村くんの食い気を知った今更そんなことはどうでもええ。 え、風呂?風呂ってあのロマンの宝庫? 羨まし…っ! って何言うとるん相手は猫やぞ、まして悪魔やぞ。 いやでもそれにしても風呂て… ――あかん想像してもうた。 散々鍛えてきた己の逞しい想像力が有り難いやら恨めしいやらで泣けてくる。俺もまだ一緒に入らせてもらえてへんのに。 ひとり密かに煩悩と闘っていると、奥村くんの膝から下りたクロがとてて、と二股の尻尾を振りながら近付いてきた。 「…クロおまえ、羨ましいやっちゃなあ…」 足に寄り添ってきたクロの頭をかいぐりかいぐり撫でてやれば俺の言葉を理解しとるんか、気持ちよさそうに目を細めながら誇らしげに小さくなぁと鳴き声を漏らす。ほんまもんの猫みたいやな。 「…クロ?志摩がどうした?」 「え、俺のこと何か言っとるん?」 「…………………!」 まだ俺の足元に引っ付いて撫でて、とでも言わんばかりに頭をぐりぐり擦り付けてくるクロが――俺にはわからんけど――にーにー鳴いて奥村くんに何事かを伝えると、何故か奥村くんは一瞬の硬直の後ふいとそっぽを向いてしもた。 …なんで。 「?クロ何言うたん?」 「知らねえよ志摩のばぁか!」 「はいぃ!?何で!?なんで俺今バカ言われたん!?」 関西人やないんやから「バカ」に深い意味がないことくらいわかっとるけど、やっぱり「アホ」がデフォルトの関西人にはキツく感じる。 「っ…」 「なんやわけわからんなあ…なあ、クロ?」 よおわからんけど原因らしい使い魔に同意を求めても、懐かれとるんかどうかもわからんような悪魔は俺には同意してくれへんかった。 せやのにまだ俺の足に引っ付いてきよるし、奥村くんもクロも難儀なやっちゃな。 「奥村くん?」 「うっせえ黙っとけ!」 べちんっ 「いったあ!なんやもう理不尽やなあ…」 背けられた顔を覗き込もうとしたら顔面に平手を食らった。 クロが喜んどるような気ぃするんは俺の思い過ごしやろか。 「まあええけど…落ち着いたら教えてな」 「誰が教えるか!」 「気になんねんもん。俺のこと言ったんやろ?クロが何言っとんのかなんて俺にはわかれへんし」 「志摩は知らなくていいんだよ!」 「はいはい」 こうなってしもたらもう意地でも教えてくれへんやろな。 まずこのかいらしい悪魔は一体奥村くんに何言わはったんや、そない俺に言えんようなこと言ったんか? 「クロ、あんたさん何言うたんよ」 撫でれば言うっちゅうもんでもないし、まず俺にはクロの言葉なんかわかれへんのやけど諦めつかんとクロに求められるままその小さな頭を撫でればまたひとつ、なぁと鳴いた。 「おおきに、教えてくれたんやな」 どうにも理解はできんけど。 ――まあ、奥村くんが教えてくれる気になるまでいつまででも待ちますよ、俺は。 『こいつりんのにおいがする!』 (なんだそれなんだそれなんだそれ…!) おわり ――――― どんどんどんどん方向性が変わっていきました。着地点どここれ。 とりあえずクロが書けたので満足です。クロほしい。 シャンプーが同じってことはつまりもう色々やっちゃってるってことでただ実際はそれだけじゃなくて常にいちゃいちゃしてるからもうそれが志摩の匂いなのか燐の匂いなのかわかんなくなってて とにもかくにも匂いが一緒なのはバカップルの究極だよねっていう。 え、いみがわからない?奇遇ですね私もです。 |