kuroko | ナノ
 
愛ゆえに恋をするのですよ
 
※黄黒♀黄 いわゆるテツナちゃん
※ぬるいいやんあはんなシーンがあります

それでもよろしければ














「僕今ノーブラなんです」

「げほっ!っ、ごほっ、…っな…何言って…っ、」

「ほんとですよ、透けてません?」

突然の爆弾発言を投下した彼女がぺた、と白いTシャツを自身の体に沿わせるように押し付けると、うっすら桜色の突起が布地を押し上げるのがわかった。まるで見せつけるように突き出された、黒子のささやかな膨らみをうっかり直視してしまってかあっと頬に血が上る。恋人という間柄である以上直に目にしたことも触らせてもらったこともあるけれど、それとこれとはまた別の話である。

「っ、…く、黒子っち…!ちょ、…っ」

「むらむらしますか?黄瀬くん」

「はぇっ?!」

「むらむらします?」

リピートを要求したわけではない。耳を疑う余地もないほどはっきりと告げられた言葉はしかしにわかには信じ難いもので、手にしていたゲータレードがいつのまにか足元に転がって体育館の床に水溜まりを作っていた。
それに気付いた黒子が手にしていたスポーツタオルで水溜まりを吸い取っていくのを眺めていても、頭の中は一向に片付かない。

むらむらなんて、そりゃあするだろう、するに決まってる。目の前で可愛い可愛い恋人が突然ノーブラなんです、なんて爆弾発言をかまして挙句に見てくださいとでも言わんばかりに一枚ではあまりに頼りないTシャツを透かして見せる、これで僅かでも欲情しない方がおかしい。

「そ、そりゃ…っ、」

「しました?」

「っ、す、する、けど…!」

こてん、と可愛らしく首を傾げる間も意識して目を逸らしていないと否が応でも視線はそこに吸い寄せられてしまう。
しかし意識的に逸らされた視線が気に入らないのか、黒子は小さく頬を膨らませて黄瀬を睨んだ。身長差ゆえの上目遣いにはいつまで経っても慣れないけれど、今こそやめてくれと切実に願ったことはない。

「…じゃあこっち見てください」

「だ、だから見れないんスよ!」

「どうしてですか?」

「どうしてって、それは、…、だから、っ、…す、透けてる、から…っ」

どうして黒子が下着を着けていないのかはわからないけれども、いくら恋人といえどじろじろ見られるのは嫌だろうと思うから必死で耐えているのに。
彼女はむぅと唇を尖らせると不自然なほど直角に横向く黄瀬の両頬を小さな手の平で挟み、あろうことか黄瀬の顔ごと自身へと向けさせた。

「っ、!ちょ、くろこっち?!」

「黄瀬くんが見てくれなきゃ意味ないです。」

「み、見っ?!なん、…ちょ、ほんと、ダメだって…っ!」

黒子の小さな身体に見合った真っ白なTシャツはまるで視線を誘うようにうっすらと彼女の華奢な身体を浮かび上がらせ、隠れた柔肌をも想像させる。幾度となく目にしたせいで脳裏に浮かぶそれはいやに鮮明だ。集まる熱は一向に下がりそうもなく、それどころかじわじわと温度を上げていくばかりで。

「…そんなに、」

「…、え?」

「そんなに、僕には魅力がありませんか。見たくもありませんか」

するりと滑り落ちた手が、所在なさげに身体の横で揺れる。淋しげな瞳はどう見てもよからぬ誤解を生んでいることは明らかだった。

「ち、が…っ、だから、…あああああもうっ!ダメなんだってば!そ、そんな格好されて平気なわけないじゃないスか!抑えんので必死なんスよっ、…も、わかってよー……」

己の色欲を吐露する羞恥に小さな身体を腕の中に閉じ込めると、すぐに背中に回された腕に温かなものを感じつつも腹のあたりに感じる魅惑のやわい感触に意識が向いてしまうのは止められない。

「…、黄瀬くん?」

「!っ、ごめ、あのいややわらかいなあとかおもってないっスから!」

「…はあ」

「ってあああああなにいってんのオレえええ!!」

ばりっと音がしそうな勢いで引き剥がすと、きょとんとした円らな瞳と目が合う。けれど嫌になるのはやはり胸元に目が行ってしまう男の性だろうか。

「っ、あの、黒子っち…?」

「?はい」

「じ、ジャージ、着ないスか…?」

「どうしてですか?」

「だっ、から、…っむらむらしちゃうんスよどうしてもっ!」

あまりに自分をわかっていない黒子を前につい、叫んでしまった。しかも内容が内容である。はっと我に返っても既に遅く、黒子はその大きな瞳をぱちぱちと繰り返し瞬かせる。穴があったら入りたい、どころか体育館の床に掘ってでも入りたい。
しかしああもう完全に変態だと思われた、と一人絶望に打ちひしがれる黄瀬を置いて黒子は、


むにゅ


顔を覆う黄瀬の手を取ると、おもむろに自身の胸元に押し付けた。
手の平に感じる柔らかさは疑いようもない。

「っ??!!!く、くくくくろこっち??!」

「じゃあ行きましょうか」

「へ、えっ?!あの、くろ…っ、」

黒子が唐突に歩き出し、押し付けられていたふにふにと柔らかい感触が遠ざかって名残惜しさを感じている自分を頭を振って追い出す。迷いない足取りの黒子が向かうのは明らかに、更衣室だ。部員用、すなわち男用の。
一体そんなところで何をするつもりかと問う暇もなく、連れて来られた部室のサムターン錠を少女の手がかちりと回したのを真っ白な頭で事実として理解した。

「くろこっち…?」

「はい」

「え、なに、するんスか?」

「なにって、むらむらしたんでしょう?」

「は、はい…」

「だったら」

えっちしましょう?
と、ベンチに座り込む黄瀬の腰を跨ぐようにして耳に直接囁き入れられた言葉に、下肢がずくん、と疼いた。こんなところで、まだ部活中なのに、いけないと思うのに。
目の前でひどく扇情的に笑う少女に、箍が外れる音を聞いた。


ひらひらと揺れるTシャツの裾から性急に手を忍ばせ、いつもの癖で背中のホックを外そうとした手が空を切ると黒子が口付けの合間にくす、と笑みを漏らす。

「わ、笑わないで…」

「ふふ、…してませんってば」

「っ、…」

示すようにTシャツを捲りあげ、あらわになった慎ましい膨らみと桃色の突起に思わずつと手を這わせると、彼女の細い肩がぴくりと跳ねた。

「っ、ん…」

「黒子っち…?きもちい?」

「あ、だめ…っ、」

小さな反応に気を良くして、触れていた場所に舌を這わせればさくらんぼ色の唇からあえかな声が漏れる。微かに震える声に快感の色を感じ取って、追い詰めるように口に含んだ粒を転がすと黄瀬の髪をかき混ぜていた手にきゅっと力が篭った。

「っふ…、ぁ」

「ん、…は…っ、くろこっち、…かわいい、くろこっち」

「や、しゃべらな…っ、ん」

逃れるように捩った細い身体のラインに沿ってなぞるように伝う汗を舐めとれば、じわりと舌に甘さが広がったような気さえして。

「くろこっちは、どこもかしこもあまいっスね…」

「?…に、言って…そんなわけ…、っ」

快感に耐えて息を詰める表情にすら欲情を駆られ声を殺すため噛み締めた唇に噛み付くようにキスをするとすぐさま解けた唇に迎え入れられて、そのまま舌を絡める。
くちゅ、と粘着質な音に煽られたのか口付けに夢中になる黒子のとろんとした表情に堪らなくなってハーフパンツの裾から手を忍ばせた、瞬間。



「っ黄瀬えええええ!!!!!」

「?!!っ、」

バキャッ、と不吉な音と共に雪崩れ込んできた怒声。反射的に口付けを解いてドアを見れば、無残な姿に成り果てたドアの前に仁王立ちする青峰と、背後には赤司と紫原と、緑間の姿があった。
怒りに震える青峰が握りしめるドアノブが再びメキッとあらぬ音を立てる。

「てめえ…、なにしてんだ…」

「っ、あ、あお…」

「黙れ一遍死んでこいこの粗チン野郎ーーーっ!!!!」

「すいませんでしたっ!!!」

とりあえず、ドアが破壊された瞬間に彼らの目から黒子の身体を隠したことに関しては己を褒めてやりたいと思った黄瀬だった。





「…テツナ、もうちょっとだったのに、って顔はやめなさい」

「ほんとですよ、折角黄瀬くんがやる気になってくれたのに」

「まったくお前は…」




(恋は下心ありきって言うじゃないですか)
(…何か違うぞ、それ)





おわり





─────
黄瀬くんにむらむらしてほしくてのーぶらな黒子っちでした。前半青峰たちはどこにいたの、とかは聞かないでくださいわたしには連れションとしか言えません。
ちなみに黒子っちはすべて確信犯です。本文ほんとにきょとんとしたことなんて一度もありません。

ただの痴女じゃねえか!