kuroko | ナノ
 
痴れる純情
 

※黒黄えち/挿入なし 
※精神的身体的共に黒子攻め黄瀬受けが許せない方、18才未満の方はここでやめておいてください 












発端はたしかに黄瀬だった。 

午後の授業が自習になり、暇だからと部室に来たのはなにも「それ」が目的だったわけではない。けれど誰が持ち込んだのか、男子運動部の部室にはお決まりと言ってもいい所謂エロ本の類を偶然に見つけてしまって、さらには昨日着替えてそのまま忘れていったのだろう想い人のTシャツを時同じくして見つけてしまって。 
我ながら変態じみていると思う。 
けれど、若い身体に一度点った欲情はそう簡単に消せるはずがなかった。 





「くろこ、っち…ぃ、あ…っ、ゃ」 

「どうして?いいんですよ、出しても」 

「んン、…っや、も…ゆるし、て…っ」 

「許すもなにも、黄瀬くんのすきにしていいって言ってるじゃないですか」 

いやいやと必死に首を振っても黒子は黄瀬が自慰に及んでいるのを眺めたまま、触れてはくれない。 
黒子の名前が入ったロッカーの前に座り込み、間を隔てるように置かれたベンチに座る黒子に向かって開脚した格好はとっくに蕩けた思考をわずか呼び戻すほどの羞恥を感じさせた。脚の間で蜜を零しながら反り返る雄蘂を両手で包み込むように愛撫する、そのぎこちない手つきは黒子に見られているという状況にひどく興奮しているせいにほかならない。 

「っ、…みない、…で…っ」 

黒子の視線にとてつもない興奮を覚えているくせ、見られたまま達することは恥ずかしくてできない。その下手な自尊心が極限まで高まった身体にセーブをかけて、決定的な刺激を自身に与えることができなかった。 

「おねが、っ…も、でちゃ…、…っ」 

「出していいんですよ…?僕に、イくところ見せてください」 

「や…っ、だ…ぁっ」 

ベンチから腰を上げ、覆いかぶさるように腰を屈めた黒子の吐息が耳殻をくすぐって背筋に震えが走る。紛れも無い快感に手中の高ぶりがどくっと脈打つのを掌に感じていたたまれなさにぎゅっと目を瞠ると、溜まっていた涙がとうとう堰を切って溢れ出した。 

「っ…ひ、…ぅ、くろこっ、ち…」 

「泣かないでください…、好きにしていいって言ってるのに…」 

恥ずかしくて、怖くて顔が見られない。 
どういう顔をすればいいのかわからない。 
黒子は、怒っているのだろうか。 
気持ち悪いと思われても仕方のないことをしていたのは自分だし、嫌悪されて当然だとは思うけれどこんな仕打ちはないと思う。 
いっそ気持ち悪いと、近付くなと一蹴してくれればよかったのに。 
自慰を、見せろだなんて。 
黒子に見られながら黒子を想って自身を慰めるという背徳に興奮を覚えてしまう自分自身も、自分の名を呼びながら自慰に耽る友人を飄々と眺めていられる黒子も信じられなかった。 
けれどそんな煩悶を余所に身体だけは欲望のままに熱の解放を訴え、先端からだらだらと零れる透明な先走りが指を濡らす。 

「ほら、もうこんなに濡れて…イきたいんでしょう?我慢しなくていいんです」 

「!っ、…く、んっ…」 

黒子の微笑を含んだ囁きが直接的に腰に響いて暴発寸前に至った性器をきつく握りしめる。気が遠くなるような激しい痛みが襲ったけれど、それでも黒子の眼前に恥態を晒すよりはよっぽどマシだった。 

「どうしたんですか?そのままじゃ辛いでしょう」 

「…っ、…ん、んっ」 

「ああ…、自分じゃイけませんか…?」 

くす、と笑む気配が一層の羞恥を煽り、零れる涙が蒸発するのではないかと思うほど頬が熱くなる。 

「ち、が…っ」 

わかっているはずなのに、わからないはずはないのに。 
痛みと羞恥と困惑でわけもわからず泣きじゃくる黄瀬の頭を、黒子が状況にそぐわない優しい手つきで撫でる。そして、己の熱を握りしめる黄瀬の手をやんわりと外させた。 

「…してあげます」 

「!っ…、や…っくろこ、っち…!待って、だ…め…っ」 

勃起して赤黒く鬱血した性器とそれをなぞるように触れる黒子の白い手との淫靡なコントラストに視覚から犯される。 
黒子の緩い愛撫は到底絶頂に至るようなものではないけれど、もどかしい快感はかろうじて残っていた理性の糸をじりじりと焼き切った。 

「あっ…!…ん…っ」 

「黄瀬くん…?」 

黒子が手を上下に動かす度に局部から漏れるぐちぐちという卑猥な水音がことさら感覚を鋭敏にする。男同士ゆえに感じる場所ばかりを的確に追い上げる指先が、いつも華麗なパスを送り出す黒子のものだと思うだけで下肢が甘く疼いた。 
射精を促すように黄瀬のものを扱く手の動きがきつく激しくなっていくにつれ、切れ切れだった嬌声が不断のものに変わる。聞くに堪えないそれに耳を塞ぎたくなったけれど、そんな余裕ももはやない。黒子の気配を、息遣いを、体温を感じるだけで堪らなくなる。 

「やっ、…!そ、こ、…っあ、ぁ…!」 

「ここが、いいんですか?」 

「っん、ぅん…っ、あっ…」 

羞恥を捨てて快楽を追うことだけに熱中してしまえば、あとはもう堕ちるだけだった。 
少しかさついた指先に先端の敏感な部分を擦られると狭い更衣室に濡れた音が響く。亀頭を濡らす愛液には白いものが混ざりはじめ、すでに限界は迫っていた。黒子の制服の袖口を握り締める手に力が篭り、黒子にもそれは伝わってしまったようだ。 

「かわいい人…」 

吐息だけで微笑う黒子の言葉が脳を蕩かす。 

「っは…あっ…、っも、いっちゃ…ぅ…!」 

「いいですから…、出して。」 

「!っ、ひ、あっ…ぁ、あ―…っ!」 

自分のものよりも随分と高い黒子の少年声で放たれた淫靡な誘いと同時に先端を鋭く刔られ、目の前が白くなるほどの強烈な快感が全身を襲う。手足の先にまで伝染する痺れと昂奮に抗うこともできず、押し上げられるまま黒子の手の中で達してしまった。 

「…っ、ふ…、…ぁ、は…っ」 

黒子の肩にぐったりと頭を預ける。射精後の倦怠感に包まれた身体はしかし、今だ燻る熱を持て余していた。 

「…黄瀬くん、」 

「!…っ、くろこっち…あ、の…っ、ごめ…」 

「気持ち悪いんですよ」 

「!……っ、…ぁ…」 

ざあっと一瞬で血の気が引いた。喉が引き攣って声が出ない。涙すら。熱に浮かされふわふわと覚束なかった思考が急速に冷えて、のろのろと回転を始める。今更言い訳なんてできるはずもないのに何を言おうというのか。 

一体、自分はなにをした? 

「っ…、…」 

「――…なんて、言うと思いましたか?」 

「!…ぇ…、え?」 

いつのまにか氷のように冷たくなって震えていた手を、白濁を受け止めて濡れたままの黒子の手に握られる。ぬるぬるとした感触はとても気持ちの良いものではないけれど、それより黒子の言葉の方が今の黄瀬にはよほど重要だった。 

「どういう…いみ…?」 

「手を出したのは僕です、黄瀬くんに気持ち悪いと言われても仕方ないことをしたのも僕で…」 

「!ちがう!黒子っちは、なにも…俺が、っ」

元はと言えば黄瀬が部室なんかで授業をサボって一人行為に耽っていたのが悪いのは誰が見ても明らかだ。そして確かに、黒子の名を呼んだのである。 
自身に指を絡めながら黒子を想い、黒子の名を口にする度身体の奥にはまぎれもない愉悦が沸き上がった。誰が来るかも知れない切迫した状況では後ろめたささえ興奮材料に変えてしまえた。 

嫌悪されて然るべきは黄瀬の方なのに。

「…ごめんなさい、意地の悪いことをして」 

「?…あ、やっ、いいんス、俺だって…、かん、じ…ちゃ…」 

乱れに乱れた己の恥態を思い返して今更に羞恥が甦る。しかし黒子はそんな黄瀬の様子を歯牙にも掛けずに続けた。 

「黄瀬くんが、僕でそういうことをしてるんだと思ったら…たまらなかった」 

「!…、っ……そ…れは、どういう意味で…?そんなの俺、都合いい風にしかとれない…よ…」 

俯く黒子の項を引き寄せると、彼の濡れた瞳と視線がかちあう。 

「…黄瀬くんの都合のいいように、解釈してください…それが、きっと正解です」 

「ほんとに…?黒子っち、俺のこと気持ち悪く、ないの…っ?」 

「それを言うなら、僕の方です。あんなことをして…」 

再び伏せられてしまった瞼にたまらず唇を押し付ける。ほのかに朱く染まった眦がひどく艶めかしくて、どきりと心臓が跳ねた。 
けれど、黒子が自分と同じ気持ちであると信じるには十分で。 

「…っ、うれしい、…黒子っち、すっげーうれしい、ありがと…っ」 

涙を滲ませながら縋り付くように黒子の細い身体を抱きしめると、腕の中でほっと息をつく気配がした。直後、背中に腕が回されて安堵に胸を撫で下ろす。 

「…次は、ちゃんとやさしくしますから」

「!…っ、う…ん…、お、ねがい、します…」 

かあっと急速に火照った頬を黒子の首筋に顔を埋めることで隠しつつ、―――今日みたいな黒子も悪くなかったのに、などと思ったことは、己の心の中だけに留めようと固く誓ったのだった。 







おわり 






―――――― 
やらかしたああああ! 
ごめんなさいすいませんごめんなさい楽しかったです/^P^\ 
ero苦手なくせに書きはじめると長くなってしまうのは一体どうしたら… 

ところで黒子っちは聖人君子ですか黄瀬くんだけいい思いしてませんか←