甘酸っぱさこそ青春の醍醐味 どうしたら本気にしてくれるんスかね? そんな問いを体育館の隅に座り込み、誰に向けるでもなく溜息まじりに呟いた。 それにすかさず反応したのは森山だ。 「何?お前でも片思いとかするの。」 「片思いしかしたことないっスよ…」 だって、これが初恋。 告白されたことは数あれど告白したことはたった一度、しかもその告白は惨くも空振りに終わり、それ以前に黄瀬の言う『好き』の意味を正しく受けとってさえもらえなかった。 それは黄瀬にとって軽くトラウマだ。 「ふうん、いい気味。」 「ひでえっスねー、森山センパイ…」 「おい黄瀬、お前どれだけの女の子がお前みたいなヘタレに恋してると思ってるんだ?より取り見取りのくせに自ら荊の道行くなんて馬鹿じゃないか?」 オレなら自分のこと好きな女の子のほうがいいけどね。と、 相変わらず小綺麗な顔をして言うことがえぐい。 森山だってモテないことはないだろうに、その女好きが災いしてすぐに振られてしまうのだ。あとはまあ、あの異名も少なからず影響してはいるのだろうけど。 自覚しながら改善の見通しがない、というか端からする気のない森山は手に持ったバスケットボールを投げて寄越し、にやりと笑った。 「ま、精々がんばれ。初恋は実らないって言うしな」 「文脈つながってないっスよー…」 足取り軽くコートに戻っていく森山を、硬いバスケットボールに頬を押し付けながら見送った。 (あーあ、黒子っちー…) いつになったら、オレの気持ちをわかってくれるんだろう。友情じゃないのに。親愛じゃないのに。 いつだってオレは、君に恋してるのに。 酸っぱいだけの青春なんてもうこりごり。 甘酸っぱさこそ青春でしょう? Fin |