思い出ポラロイド 帝光祭が終わり、浮かれたお祭り気分の余韻もそろそろ薄れてきたこの頃。写真部提供という、廊下に張り出された大量の写真に目を留める人も疎らになり廊下に積み上げられていた段ボールや木材も綺麗さっぱり片付けられた。 しかし、それでも今だ熱の冷めやらない戦場がひとつ。それは写真部が裏で行うブロマイド販売会だった。足りない部費を賄うためという名目で行われるそれは学校側も知った上での黙認だと専らの噂である。 そして案の定というかなんというか、あまりにも予想通りすぎる光景に桃井さつきは辟易していた。 「…もう、みんなきーちゃんの写真買ったの?」 「だって黄瀬くんは個人的な撮影禁止だったんだもん!」 呆れる桃井には目もくれず机の上に広げた見事に黄瀬ばかりが写った写真たちをまるで品定めするように眺める友人たちの姿にいっそ恐怖すら感じる。 中にはもちろんあのコスプレ姿の写真もあって、見ている限りそれが一番人気のようだ。桃井にしてみれば燕尾服姿の黒子の写真の方がよっぽど欲しいのだけれど、なんだか後ろめたいような気がして興味はあれど結局行かなかった。行ったところで黒子の写真があるかどうかも怪しい。 「う、わー…すご…」 まさに争奪戦、という体。 時折混ざる赤司、青峰、緑間、紫原の写真を意外に思いつつも彼らが影で人気があることは既に承知済みだったのでたいして驚きはしなかった。変人として有名である彼らもバスケをしている姿は確かに格好いい、と言えなくもないことも、ない。きっと。 眺めるだけなら害はないのだ。 「あ、ほらさつき、これ」 言いながら目線すら寄越さずに手渡された写真。 「なに?きーちゃんたちの写真なんていらな…、っ!!」 突き返そうとして、しかしその手は一瞬の震えと共に止まった。 「よかったね、混ざってたよ」 なんておざなり。なんてぞんざい。 でもそんなこと構わなかった。気にしている場合ではなかった。 黒子の写真を前にしては。 「っ、て、テツくん…!!」 「あげるよそれ一枚しかなかったし」 「あ、あ、ありがとう…っ!!」 黒子の姿は撮ろうと思って撮れるものでもないだろうから、多分きっと、ほんの偶然に違いない。そのたった一枚が燕尾服姿であったことに感激しながらなおも黄瀬の写真ばかりを漁っている友人に心からお礼を言い、たった一枚の写真を大事に胸に抱えて足取り軽く部活へと向かった。 * 「何かいいことでもあったんですか?」 「!えっ?!な、なんで!?」 まさに良いことの元である黒子に突然そう声をかけられて動揺してしまった。 桃井を女とも思わないような青峰たちとは違って女の子に対してはいつでも紳士的な黒子だけれど、自分の写真が売買されているなんて知ったら気を悪くするかもしれない。まして貰っただけとはいえ桃井が所持していることがばれたらどう思うだろう。 「?いえ、ただうれしそうだったので」 「そ、そんなに?」 「にやにやしててきめえ」 青峰には一発お見舞いしてから、そこまで顔に出てしまっていただろうかと思わず両手で頬を擦ると黒子がくすと小さく笑う気配がしてどきりとする。 「え、あの、テツくん?やっぱりどこか変?」 「いえ、かわいいなあと思っただけです、すみません」 「!」 きゅん、と。まさか少女マンガでもないのだから音なんてするはずはないのだけれど、聞こえてもおかしくないくらいの心地。 素でこんなことを言ってしまえる黒子が少し恨めしくて、でもやっぱり大好きだった。 「うへえ…よくそんな堂々と嘘言えんなテツ」 「う、嘘ってなによっ、青峰くんのあほんだら!」 「お世辞もわかんねえお前の方があほだろ!」 また始まった、とでも言いた気な黒子の表情は非常に心外ではあるのだけれど、その表情さえ桃井の心をときめかせるのだから致し方ない。 口の悪い幼なじみと言い合う傍ら、傍観を決め込むことにしたらしい黒子の表情に心の大半を奪われていたのだった。 (またやってんスか) (どうも僕の一言が原因のようで桃井さんには忍びないんですけどね) (……ぜったい黒子っちわかってないっスよねー…) (?) おわり ―――――― いまさらなReplace帝光祭ねたでした^^青黒桃幼なじみサンドおいしいですもぐもぐ ぜったい写真出回ってたと思うんですよね。価格ヒエラルキーはこんな↓ 黄>>>赤>紫>緑>青 黄瀬は言うまでもない、赤司は写真自体少なそうなので希少価値でお高め、紫原はアントワネットが人気で高値、緑間はご利益的な意味でちょっと高め、青峰は代わり映えしないから安価^Q^ 黒子っちの写真は非売品だよ!値段なんかつけれないよ! 男性陣の間でももいちゃんの写真も出回ってたらいいと思います。 |