いきなりですが。

俺は審神者なんてやりたくなかった。噂には聞いている。刀に念送って命を宿らせて一緒に暮らしていくって。無理。

なんだよ刀を守ってやってくれって。貴方には素質があるだと?

あるわけねーだろ。

「前任の審神者は…」

大体、なんで審神者やったことがない俺に頼むんだ。誰でもいいんか?政府さんよ。

「修様?」

「あぁ。」

急に名前呼ばれて思わず頷いてしまった。喋る狐がみるみるうちに涙を溜めてありがとうございます、と感謝された。なんだ、ドライアイか?目を潤してくれてありがとうって、どんだけ乾いてたんだ。

「でもやはり心配なのは、空気ですね。」

そうだな、ドライアイのやつは空気重要だ。寒い日の冷たい風で目が染みたり、乾燥してたりしたら涙とまんねぇやついるし。

「修様は、あの空気に耐えられるか…」

「安心しろ。俺は平気だ。」

「修様…!」

キラキラした眼差しで見られた。本当に苦労してるんだな、狐。お前の方が心配だわ。

「絶対に助けてあげてください。そして、修様もどうかご無事で…」

そんな空気やばいの。俺も一年前にコンタクトデビューして最近ドライアイですね、って言われたばっかりなんだよな。

「大丈夫だ。」

そんな心配するな。不安になってくるから。

「そろそろ着きます。」

運転手の言葉で窓の外を眺める。え、もしかして俺こんなとこに住むの?どこまでが敷地なんだ。流石に広すぎる…

門の前で車が止まり、運転手が後部座席のドアを開けた。

「それでは審神者様、いってらっしゃいませ。」

「あぁ。」

車を降りて狐の方に振り返る。

「審神者様、必ず定期的な本丸状況の報告をお忘れなく。」

そう言って狐が乗った車は来た道を引き返していた。…あれ。狐来ないの?チュートリアルあるって聞いたことあったけど。初期刀がどうたらこうたらって言ってた気がするけど。

「……。」

デカデカと存在感がすごい本丸を見上げる。窓が沢山あるな、なんて思って数えてみようかとも考えたが面倒臭いからやめた。

まっすぐ前を見て門を潜った。これからお世話になります。

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