小説えーすりー | ナノ

1


「三好さん。」

ベッドを背に寄りかかり、脚の間にいる三好さんを後ろからホールドする。

「ねぇ、いい加減名前で呼んでよー。」

スマホをいじっていた手を留めて振り向いたと思ったら頬を膨らませていた。人差し指でその頬をつつく。ぷしゅー、としぼんでしまった。

「どうしてですか?」

「名前で呼ばれたいから!」

「ベッドの上では呼ばれるの嫌って言っているのに。」

「そ、れとこれとは別っしょ!純粋に!」

三好さんのうなじを噛むとジタバタと暴れだした。セックス中に恥ずかしい、嫌だ、呼ばないでっていつも言うくせに。その姿が見たくてわざと言ってやるけど。

「…三好さんも、俺のこと最初は名字呼びでしたよね。」

う、と言葉を詰まらせて顔を逸らす。

「三好さんってすぐあだ名付けて呼ぶのに…俺、悲しかったですよ?」

「で、でも今はちゃんと名前で呼んでるし!」

なぜか俺だけ。よく分からないあだ名をぽんぽん思いつき友達増やしていく三好さんが。未だに納得いってないけど。

目を合わせてくれない三好さんの顎を持ち、こっちを向かせた。ついでに持っていたスマホも奪ってベッドの上に置く。

「あ…」

「名前呼んでください。」

ちゅ、と軽めのキスをすると耳まで真っ赤になった。

「…ハル。」

「はい。」

「ハルっ…ん、」

三好さんが名前を呼ぶ度にキスを送る。その仕組みがわかると目尻を赤くして何度も呼ぶ。三好さんがかわいい。

「もっと…」

…駄目だ、この人。無意識じゃねぇか。俺の方が背が高いから必然的に上目遣いだし。

「煽ったのは貴方ですよ。」

「え?っん、んぅっ!」

更に身体を引き寄せ口内に舌を侵入させる。

自分の唾液を流すようにすれば三好さんは素直に飲み込む。逃げる舌を捕らえて絡めれば俺の手を強く握る。

この人、よく今まで襲われなかったな。

「んぁ、ん、ぁ…はっ、バカ…」

「貴方がかわいいんです。」

身体を反対にさせて今度は正面から抱く。背中に回された三好さんの手が服を掴んだ。

「…俺が三好さんの名前呼んだら、三好さんからキスしてくれますか。」

「えっ!?」

勢いよく顔を上げ丸くなった目で俺を見た。もうキス出来る距離だけど。

「一成さん。」

「さ、さんって付いてるからダメ!」

「一成。」

「っ、うー…ずるい。」

顔を俺の胸元に押し付けて見えなくなってしまった。呼んでって言ったのは三好さんですよね。

「…一成、キス。」

耳から後頭部にかけて撫でる。

「わ、かった。」

「はい。」

「目くらい瞑ってよ!」

「はいはい。」

目を瞑ると三好さんがモゾモゾと動き出して俺は顔を包まれる。上を向かされ唇に柔らかい感触が伝わった。膝立ちになってキスをしてくれたらしい。恐る恐る俺の顔を見つめている。

かわいい。もう、かわいい。



「…好き、ハル。」

小さな声だったけどもちろん聞き逃すわけがない。

「俺もです、一成さん。」





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