「…晃輔。」

「んー。」

安いインスタントコーヒーを淹れているとぴったりと背中に寄り添うなずな。どうしたものかと顔だけ振り向いて首を傾げる。

「…いちゃいちゃしたい。」

「え?」

「晃輔は、そういう気分じゃない…?」

いきなり爆弾発言するなずな。それを聞いて身体がピタッと固まった。

う、わ。今、キた。不安そうな顔とか、遠慮がちに言ってしまうこととか。

「なんで。俺はいつでもなずなといちゃいちゃしたいよ。」

火を消して向かい合う。今度は俺がなずなを包み込んだ。

「だ、だって今日晃輔…」

驚いて焦っているようだった。今日の俺がどうしたって?そんな不安にさせることはしていない…はず。


「全然キスしてくれない。」

「…え?」

確かに一日中背筋伸ばして、背中を丸めることになるキスは控えてたが。

それが不満だったと。何それすごくかわいい。

「あー…実はね、」

とりあえずセンセーに言われたことや背筋伸ばすことを優先していたことを伝える。するとわなわなと震えだして胸を拳で何度も殴ってきた。痛い。

「バカバカバカ!晃輔のばかぁ!」

「まって、痛っ、なずな?」

手首を捕まえて止めさせると頬を赤くして目を細める。

「これからキスの回数、減るのか…?」

「……。」

ギュンってきた。かわいすぎて困るんだけど。そんなに俺とキスしたいの。

ついつい唇を奪ってしまった。

「なずな。」

「…なんだよ、猫背なるぞ。」

むすっと視線を逸らす。

「別にいいかなって。」

「よくない!カッコ悪くなるんら!」

「怒ってる?」

「怒ってる!縮めっ!」

俺の頭を抱えて下にグイグイ引っ張る。首が痛い。ものすごく痛い。頬を包んで寄せる。

「ふはっ、変な顔。」

顔を近づけて鼻先をくっつける。

「…晃輔がデカいのが悪い。俺は悪くないからな…」

「そうだよ。なずなは悪くない。」

ハッとしてあちこちに目線をさ迷わせた。少しの罪悪感を感じているらしい。思わず笑って唇を押し付けた。

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