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ダメだ。なずなが足りない。
昨日は我慢した。手を握ることしかできなくて思う存分にぎにぎした。でも今日も痛そう。
「おはよう、なずな。」
「ん、おはよ。」
毎朝の日課、なずなの家に迎えに行った。本日始めの見た顔が困ったような笑みで心が痛む。その痛み俺が代わってあげたい。
なずなが手を取って両手で握りしめてきた。視線だけ俺を向いている。
「き、昨日よりはだいぶ良くなった。」
「そっか、よかった。でも安静にね。」
俺が心配してるのを感じ取って安心させてくれたのか。優しい。
「頭動かせれる。」
「それでも動かしちゃダメ。悪化するよ。」
なずながそう言うほど俺の顔に心配の文字が出てるのかな。
「……。」
「なずな?」
なずなは視線を下に降ろして顔を歪めた。このままはお互い辛い。早く笑顔になってほしい。
「ぎゅってして。」
「…え?」
「ダメ?」
なずながこんなにも可愛い。
だがしかし。相手は首を痛めてるんだ。抱きしめるダメ。頭撫でるダメ。キス、もダメ。
「うん、我慢な。」
「うー…」
膝を曲げて目線を合わせる。思い通りにならなかったようで睨まれてしまった。口もへの字になってる。
どうしたもんか。これ以上不機嫌にさせられない。
前髪をくしゃりと掻き上げ、額に唇を落とす。
「好きだよ、なずな。」
「っ、わ、わわっ」
思わず顔を上に動かしたなずなの体が固まった。
「い、痛いっ…!」
「なずな!?」
痛みに悶えてるなずなを抱え走り出した。早く治りますように。
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