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「あれ、十座くんいないんだ。」

「椋とスイーツバイキングに…ってちげぇよ!!」

「何が違うの?」

「違くねぇけど!!」

なんかよくわからないこと言ってる。いつまでも扉のところで突っ立っている万里くんを他所に床に座る。脚が短いテーブルに肘をついて顎を乗せた。まだ1人で唸ってる万里くんは見てて面白い。

「お、お前至さんたちの前でっ…!」

「ちゅーした。」

その場に崩れ落ちた。そんなに嫌だったのかな。いや、多分恥ずかしいのが大きいのか。

「意味わかんねぇよ、ホント…」

「何が?」

顔を覆っていた手を退けて俺をまた睨む。

「お前が何考えてるかわかんねぇって言ってんだ!!」

一瞬だけ悲しいような寂しいような表情をした。

「こんな常に眠いって顔してるヤツがタバコ吸ったり1人でふらふらどっか行きやがったと思ったら頭から血ぃ流して現れたり!!」

「それ関係ある?」

それ恋人になる前の事だよ。俺が屋上でタバコ吸ってんの目撃したのが出会いじゃん。


「…俺のこと、どうでもいいとか、」

…ん?

「俺が何処で誰と何してようが関係ないって、」

あ、この顔…後悔してる顔だ。泣きそうじゃんか。

「寂しかった?」

「っ、」

それじゃあ、至くんと異常に近かったのは嫉妬してほしかったから?俺が幸くんに距離を詰めたら万里くんが焦ったのは俺のことを密かに見てたから。実は前から頑張ってたのかな。

なにそれ、かわいい。

「来て、万里くん。」

頭を上げて両手を広げる。困惑気味に俯き、しばらくしてからゆっくり手と膝で歩いてきた。胡坐をかいた太股を2、3回叩くと意味を理解して素直にその上に座った。

さっきまでの威勢はどうした。しおらしいぞ。

…でもまぁ、無関心だったヤツがいきなりキスして嫉妬丸出しだもんな。そりゃあ驚くわ。俺だったらびびる。

「ちゃんと万里くんのこと見てるよ。大事な恋人だからね。」

「…ホントに思ってんのかよ。」

「俺もバカだからなぁ。」

俺の肩に手を置く万里くんを少し見上げると目が合う。万里くんの腰に腕を回して引き寄せる。

「気づかなかったくせに。」

「うん、ごめんね。」

「反省したか。」

俺が万里くんとの時間を疎かにしてたこと、不安にさせてたこと…まだある。1年付き合ってんのにダメな恋人やってるなぁ。

「すごくした。」

そう言うと満足げに笑った。最近、俺に笑いかけたことあったっけ。万里くんてこんなかわいいんだ。

「んっ…」

キスをした。空いた時間を埋めるように、何度も。

人前ではこういうことすんなって怒られた。




おわり


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