▽ 4-32
蘭ちゃんに支えられながら湖の淵ぎりぎりまでやって来た。
口々にコナン君や安室さんの名前を呼ぶ子供達や園子ちゃん。
零くん・・・・・・、コナン君・・・・・・。
「・・・・・・っ・・・」
突然、湖面が盛り上がる。
「あっ!何か出てきたぞ!」
彼らが指さした場所には、湖面に浮かぶ<芦屋のひまわり>があった。
そして・・・・・・。
「コナン君だ!それに安室の兄ちゃんも!」
「あいつら無事だったのか」
「良かった・・・っ・・・」
私を支えていた蘭ちゃんが安堵の声をもらした。
*
この爆発から<ひまわり>を守ったことを次郎吉さんや毛利さんから賞賛される二人。
そんな輪を早々に抜けて、零くんが私の元にやって来た。
「・・・っ、怪我はしてないか?」
「大丈夫・・・。でも安室さんの方が・・・っ・・・」
どう見ても私なんかよりボロボロの彼。
あちこちにある擦り傷、そして右手からは僅かに血が流れている。
その姿を見ると自然と涙が溢れそうになる。
「これくらいすぐ治るから大丈夫だよ。なまえが無事でよかった」
限界を超えて瞳からこぼれ落ちた涙を左手で零くんがそっと拭ってくれる。
「皆無事だったんだ。<芦屋のひまわり>もコナン君のおかげで無事だ。泣かなくていい」
すぐ近くに皆が居るというのに彼はそのまま私の肩を抱き寄せた。
すっぽりと収まった腕の中。僅かに彼の手が震えていることに気付く。
「・・・・・・零・・・くん?」
周りに聞こえないくらいの小さな声で名前を呼ぶ。
「・・・・・・っ・・・、なまえが無事でよかった。あの炎の中でカメラ越しにお前を見た時は、心臓が止まるかと思った・・・」
その言葉に自分の迂闊な行動がこの人にどれだけ心配をかけたのかを改めて実感した。
「・・・・・・ごめん・・・」
「次はもうあんな真似するなよ」
「うん・・・っ」
痛いくらいに抱きしめられる腕。
「あー!!!なまえお姉さんと安室さんがぎゅーってしてる!」
「ホントだ!」
子供達の声が聞こえ、思わず二人ともばっと離れる。
「コラ!ガキんちょ共!いい所だったんだから邪魔しちゃダメでしょ!」
「ちょっと園子・・・っ!」
悪戯な笑みを浮かべてこちらを見る園子ちゃん。そしてそれを諌める蘭ちゃん。
それを苦笑いで見るコナン君と、呆れ顔の哀ちゃん。
そこには皆の変わらない姿があった。
*
コナン君と安室さんのおかげで<芦屋のひまわり>は無事守られた。
飛行機の爆破も、美術館に火を放ったのも、全てキッドの犯行ではなかった。
彼の行動は全て<ひまわり>を守ろうとしたもの。
全ての謎が解けた。
次郎吉さんはコナン君や安室さんを褒めたたえたが、安室さんは「コナン君のお手柄です」と一歩下がって笑っていた。
「さすがキッドキラーじゃ!」と笑う次郎吉さんの笑顔が、翌日の新聞の一面に飾られこの事件は幕を下ろした。
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