▽ 4-26
零くんが拳銃を構えている姿を見たのは初めてだった。
その背中を見た瞬間、自分の軽率な行動を悔いた。
この場にはコナン君がいる。彼だけならまだしも、快斗くんもいるのだ。
彼の正体がバレてしまう可能性だってある。
「・・・なんでそんな顔をしてるんだよ」
いつの間にか目の前に来た零くんが、少し腰をかがめて私に視線を合わせてくれる。
「・・・っ・・・ごめんなさい・・・。私が勝手なことしたから・・・」
彼の目を真っ直ぐに見ることができない。
「大丈夫だよ。さっきのは俺が自分で判断したことだ」
ぽんぽんと頭を撫でてくれる手が、いつもと変わらない優しさで思わず涙腺がゆるみそうになる。
「・・・・・・ただ約束を破って無茶したことは、後でしっかり反省してもらうからな」
頭を撫でていた手がそのままぎゅっと私の頬をつねる。
「とりあえず今はここから脱出することだけ考えるんだ。わかったな?」
「・・・うん、わかった」
そうだ、このままではここでみんな死んでしまう。
皆で出口へと向かおうとした瞬間、私は勢いよく零くんに腕を引かれた。
「・・・・・・っ・・・!!!」
ガラガラと音を立てて崩れる天井。
瓦礫が落ちると同時に、炎が広がって出口を塞いでいく。
「どうしよう、通路が・・・!」
思わず不安がこぼれる。
「大丈夫だよ、なまえちゃん」
そう言ったのは私たちのやり取りを見ていた快斗くんだった。
ポケットから何かを取りだした彼は、それを口元に近づける。
「寺井ちゃん、聞こえるか?」
何やらそれで指示を出している彼。
「消火の算段があるのか?」
「あぁ、一応な」
コナン君が快斗くんに尋ねると、彼はにっと笑みを浮かべた。
「なまえちゃんはその彼氏さんに任せるとして、死ぬんじゃねーぞ名探偵」
「一体何を・・・?!」
「あんたもなまえちゃんのこと絶対に離すなよ」
天井から地鳴りのようなゴゴゴゴ・・・という音がする。
「「まさか・・・・・・」」
コナン君と零くんの声が重なる。
「・・・・・・なまえ、絶対に離れるな」
聞き返す間もなく、思いっきり零くんに抱きしめられる。
ドォォンという大きな音とともに天井を突き破って大量の水が流れ込んでくる。
あっという間に私達はその水流に飲み込まれる。
激しい水流の中で、零くんの腕が離れないようにしっかりと背中に回っていた。
そこで私の記憶はぷつりと途絶えたのだ。
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