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Another side (2/2)
「安室さん?!早くエレベーターに乗らないと!」
コナン君が声を上げる。
「・・・っ、先にエレベーターに向かってくれ!」
置いていけるわけがない。
頭の中を占めるのは、先程階段を駆け抜けていたなまえの後ろ姿。
「でも・・・っ・・・!」
「なまえだ!あいつがまだここに残ってる!」
「!!」
その言葉にコナン君ははっと息を飲む。
「蘭さん達は一緒じゃなかったようだからきっと避難してるはずだ。だから君も早くエレベーターに向かうんだ!」
すぐそこまで黒煙が迫っている。
自身の声が焦りを帯びていることがわかる。
「・・・・・・わかった!安室さんも必ず避難してね?」
「あぁ、わかってる」
コナン君がエレベーターの方へと向かったのを確認し、すぐになまえのいた非常階段へと向かう。
チューブ通路のひまわりは轟々と燃えている。このままではあっという間に建物に火が回るだろう。
彼女がいたのは二枚目の<ひまわり>の近くの非常階段。おそらく展示室にでもいるのだろう。
なまえがそんな場所にいる理由なんてひとつしか思い浮かばなかった。
「・・・・・あの約束、忘れたわけじゃないよな・・・!」
やっとの思いで駆けつけた展示室の前。
「大丈夫?怪我してない?」
「・・・っ、うん。ごめん、快斗くんは?」
「俺は大丈夫だよ。なまえちゃんが怪我してなくてよかった」
やはりな・・・。
聞こえてきた男女の会話。
「・・・っ、クソ!なまえちゃんをこんなとこで死なせるわけにいかないし、さっさとこいつをどーにかしねぇと」
当たり前だろ。こんな場所でなまえを死なせていいはずがない。
「なまえ!」
名前を呼ぶと、大きな目をいつも以上に見開いて俺を見る彼女と視線が交わる。
「・・・・・・っ!なんでここに・・・?!」
「それはこっちのセリフだ。怪我は?どこも怪我してないのか?」
駆け寄ってきた彼女の両腕を掴み、頭から足まで見る。パッと見たところ大きな怪我はないようだ。
その事実にほっと息をつきながらも、彼女が約束を破ったことには僅かに苛立っていた。
分かっているのだ。
なまえはそういう女性だ。
知った人間が危険に巻き込まれれば、自分の危険なんて厭わず助けようとする。
その優しさに俺自身だって何度も救われた。
「・・・あんたは・・・っ」
そんな俺達を見て声を漏らしたのは、工藤新一の姿をした怪盗キッド。いや、黒羽快斗。
この気持ちをどう表現したらいいんだろうか。
彼を心配するなまえの気持ちは尊重したい。
けれどその気持ちのせいで彼女が危険な目にあっている。
「・・・・・・なまえちゃんを巻き込むつもりはなかった。悪かったよ」
「・・・・・・、」
「だからそんな怖い顔で睨まないでくれ」
そう言ってふっと笑った彼は、<ひまわり>の横に挟まっていたポールに再び足をかける。
なるほど、彼はこの<ひまわり>を脱出用シューターにいれようとしていたのか。
キッドの目的がわかり、点と点が繋がった。
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