続・もし出会わなければ | ナノ
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▽ 10-4



表面上は何も変わらない日々。あの日から零くんはなにも聞いてこなかった。


その反面、赤井さんからはちょこちょこ連絡があった。零くんと付き合うようになって、必要以上に連絡をとることはなくなった私達。けれどここ最近は、他愛もない内容のメッセージがたまに届くようになっていた。

スーパーで見つけたという謎の調味料の写真が送られてきた時は、ガラにもないその内容に笑ってしまったものだ。


彼が私ことを心配してくれている事は、その不器用な文面からでも十分に伝わってきた。






梓さんから久しぶりに会いたいと連絡がきて訪れたポアロ。

最近バタバタしていたこともあり、ここに来るのも久しぶりな気がした。


「いらっしゃいませ!あ!なまえさん!」

扉を開けると笑顔で迎えてくれる梓さん。

彼女のほんわかとした雰囲気に自然と口角が上がる。


その後ろからやって来た零くんもいつもと変わらない様子で迎え入れてくれる。


ランチタイムを過ぎた店内は比較的落ち着いていて、私はいつものカウンター席に座り梓さんや零くんと他愛もない話をしていた。


その時、カランカランと入口のベルが鳴る。


そこに居たのはコナン君と昴さん。コナン君はともかく昴さんがポアロに来ることは珍しい。カウンターに立つ零くんも梓さんに見えない角度で怪訝そうな表情をした。



「あら、コナン君いらっしゃい」

梓さんが昴さんに会釈をしながら、コナン君に声をかける。


「こんにちは!あ、なまえお姉さんも来てたんだね!」

ニコニコと子供らしい笑顔で私のひとつ空けた隣の席に座るコナン君。自然な流れで昴さんもコナン君の隣に腰かける。


「コナン君は学校終わり?沖矢さんも一緒に来るなんて珍しいですね」
「うん!探偵事務所の近くで昴さんに会ったから誘ったんだ」

オレンジジュースを梓さんに頼んだコナン君がそう言った。


梓さんがキッチンに引っ込んだので、カウンターに残されたのは、私とコナン君と昴さんと零くんの四人。


「本当に珍しいですね、貴方がここに来るなんて」

二人にに水を出しながら、眉をひそめた零くんが昴さんを見る。


「ちょうど通りかかったら店の中になまえさんの姿が見えたので。お邪魔させていただきました」

にっこりと笑いながらそう返した昴さん。その言葉にピキっと見てわかるほど零くんの眉間に皺がよる。


赤井さんが零くんを揶揄うことはたまにあったが、今日の彼はいつもの彼らしくない。

昴さんの返答が予想していなかったのはコナン君も同じらしくて困ったように私を見た。


「・・・・・・っ、えーっと、コナン君!お腹空いてない?一緒に何かデザート食べる?」
「うん!ボク、パンケーキがいい!」

わざとらしくメニューを広げ、コナン君に見せる私。それに乗っかってくれる彼。


ここで私が変に口を挟むより、コナン君と普通に話していた方がいいだろう。そう判断した私は、コナン君とメニューを眺めた。





デザートを注文した私とコナン君。それを受けて零くんはキッチンに向かい、代わりに梓さんがホールに戻ってきた。


比較的静かな時間が流れているポアロ。


カランカランと再び入口のベルが鳴る。


入ってきたのは一人の若い女性。少し派手な化粧は、この喫茶店の雰囲気とは少し異なって見えた。


「いらっしゃいませー!」

そう言って彼女を迎えた梓さんの表情が少しだけ歪んだことに私は気付く。

彼女を席に案内した梓さんは、こっそりと私の近くに来て耳打ちをする。


「あの人最近よく来るお客さんなんですけど、安室さん狙いのちょっと面倒臭いお客さんなんですよ・・・。安室さんは全く相手にしてないから、気にしちゃ駄目ですよ!」

早口でそう告げた彼女は、パチリとウインクをしてそのお客さんにお水を持っていく。


零くん狙いのお客さん。


そんな人は今までだってたくさん見てきた。

必要以上に近い距離で彼に絡むお客さんだっていた。


特にそれを気にしたことはなかった。
小さなヤキモチを妬いたことはあっても、本気で何かを思ったことは今までなかった。


でも何故か今日はいつもとは違って、背中を嫌な汗が伝った。

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