▽ 8-24
中央が崩れ落ちた連絡橋の先で大きくジャンプしたコナン君は、ビルの谷間を越えA棟から延びた橋の残骸に着地する。
けれどバランスを崩した彼は、スケボーから放り出され連絡橋の残骸の上を転がった。
「・・・っ、危ない・・・っ!」
剥き出しになった鉄骨の隙間から落ちそうになった彼の姿に思わず悲鳴をあげた。
私が彼に手を伸ばすより先に、隣いた零くんがコナン君の腕を掴んだ。
「っ、本当に君は無茶をする子だな」
まさか連絡橋を飛び越えるとは想像してなかった零くんは、コナン君を引き上げながら呆れたように少し笑う。
「痛てぇ・・・。それよりどうして安室さんがここにいるの?!」
コナン君はスケボーから落ちた時に打った腕を擦りながら、私と零くんを交互に見た。
「コンピュータ室を見に行ったけど想像以上に爆発が酷くて、諦めて下に降りていたんだ。そうしたらなまえがここに取り残されてるのを聞いて戻ったんだよ」
「やっぱりコンピュータ室は完全に駄目だったんだね・・・。それより安室さんはなまえお姉さんがここにいるって誰に聞いたの?」
コナン君もコンピュータ室に残っていたかもしれない組織のデータが失われたことを残念そうに呟く。
私はコナン君のその言葉にはっとした。
たしかに零くんは、私がここに残されていることをどうして知っていたんだろうか。
私から彼に連絡なんてしていない。階段をおりていた彼が連絡橋の爆破に気付いてもそれに私が巻き込まれているなんて知らなかったはずだ。
展望エレベーターが止まっていることも、ビルの外からでなければ気付かないだろう。
気が動転していてコナン君に言われるまで気付かなかった。
私とコナン君の視線を受けた零くんは、彼にしては珍しく困ったように視線を逸らす。
「んー・・・まぁ、教えてくれた人がいたんだよ。とりあえずそんな事より早く屋上まで上がろう。コナン君もまだ歩けるかい?」
「・・・うん、大丈夫だよ」
話を逸らした零くんにコナン君は少し不満そうにしながらも、早く屋上に向かわなければという意見には同意らしく話は一旦保留になった。
階段を上がりながら先程の零くんの言葉を思い返す。
教えてくれた人とは一体誰なんだろうか。
既に避難している毛利さん達なら展望エレベーターが止まっていることに気付いたかもしれないけど、それなら零くんが名前を隠すことはないだろう。
零くんが名前を伏せたり、話を濁すのはいつも組織絡みか公安の仕事絡み。
展望エレベーターが止まる原因となったジン。彼が私の事を知っているはずがないし、わざわざそれを零くんに伝えるわけもない。
だったら一体誰が・・・・・・。
「心配しなくても大丈夫だ」
そんなことを考えていると、少し前をにいた零くんが振り返りながらそう言った。
「え?」
「さっきの話、気になってるんだろ?ちゃんとここを脱出できたら話すよ。とは言っても、俺もよくわかってないんだけどな」
「私そんなに顔に出てた?」
「あぁ。さっきからずっと眉間に皺を寄ってる」
零くんは、そう言うと笑いながら私の眉間をツンっと人差し指でつく。
指先の当たった場所を擦りながら彼を見上げた。
「とりあえず今はここから脱出することだけ考えるぞ。話はそれからだ」
「うん。わかった」
私が頷くのを確認すると、零くん再び前を向いた。
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