続・もし出会わなければ | ナノ
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▽ 8-23


五十階をこえると、ようやく視界を覆っていた黒煙が和らぎ新鮮な空気が肺を通った。


駆け足で階段を上ったせいだろう、私の息は切れ気味でその新鮮な空気を求めて口で大きく息をした。


腕を引いてくれていた零くんの歩むペースが少しゆっくりになり、私の方を振り返る。


「大丈夫か?ここまではまだ火も回ってきてないし、少しゆっくり行こう」

一段上の階段からこちらを見る彼は、息一つ乱れていなくて体力の差をまじまじと感じる。


「・・・ありがとう・・・っ」

肩で息をしながら返事をする私。足を引っ張ってる、そう感じてしまうのを知ってか知らずか彼は心配そうに眉を下げた。


「ヒールだし足も痛いだろ。背中乗るか?」
「っ、いいよ!大丈夫!まだ歩けるよ!」

踊り場にたどり着くと、私の前で腰を屈めた彼。私は慌てて首を左右にぶんぶんと振った。


「ふっ、そんなに嫌がらなくてもいいだろ」
「重いもん!それに零くんだって階段登ったり下りたりで私より疲れてるし・・・」
「なまえとは鍛え方が違うからこれくらい平気だよ。それになまえ一人くらい背負ったってこんな階段なんてことないさ」

私の反応が面白かったのか零くんはくすくすと笑う。


それはその場に似つかわしくない、いつも通りのような会話。

その間も手はしっかりと繋がれていて、彼の手は私の手をずっと引いてくれていた。




しばらく階段を進むと零くんは足を止めた。


「毛利さんに電話して、目暮警部から警視庁の救助ヘリを頼んでもらおう」
「公安じゃなくていいの?」
「その方が早いかもしれないけど、さすがに組織の目があるここで俺が公安のヘリを呼ぶのはリスクがありすぎる。毛利さんから目暮警部を通して警視庁のヘリを呼んでもらった方が自然だろ?」

たしかに。と私が納得している間に、零くんは携帯を取りだし毛利さんに電話をかけ始めた。





事情を伝えると目暮警部はすぐに救助ヘリを要請してくれた。

毛利さんと目暮警部の慌てた声は、隣にいる私の耳にも漏れ聞こえてきた。その向こうからは私の無事を喜んでくれる蘭ちゃん達の声も聞こえて、あの子達が無事に地上に辿り着けたことにほっとひと息ついた。


屋上まで行けばヘリでこのビルを出られる。そう思うとヒールのせいでヒリヒリと痛む踵も、棒のようになった足も、まだ踏ん張れる。



やっと五十九階の階段を上り終えた時、どこからかエンジン音のようなけたたましい音が聞こえてくる。



「何の音だこれ?」
「零くんも聞こえる?何だろ・・・」


同じくその音に気付いた零くんも辺りに耳をすませた。


私達がいるのは六十階。ちょうど連絡橋のあったフロアだ。

ぽっかりと穴のあいた連絡橋のあった場所に視線をやる。



「・・・・・・っ!!!なっ・・・、零くん!あそこ!!」


何気なくそちらに視線をやった私は、同じく穴のあいたB棟の連絡橋のあった場所を見て階段を進もうとしていた零くんの腕を強く引いた。


「まさか嘘だろ・・・っ?」
「飛び移る気なの?!」


私達は思わず足を止め、B棟をじっと見た。



そこにいたのはスケボーに乗り、片手にライトを持ったコナン君だった。

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