▽ 8-18
Another side
子供達が乗ったエレベーターの扉が閉まる。定員オーバーで少年探偵団の子供達が先にエレベーターに乗り、次のエレベーターがやってくるまでの間、コナン君が隣にやってきて服の袖を引いた。
「安室さん、ちょっといい?」
「あぁ、どうしたんだい?」
彼の視線に合わせ、膝を曲げ腰を屈めた。
「さっき“あの人”が高木刑事達と非常階段に向かったんだ。一応博士に見張るように伝えたんだけど・・・」
「わかった。下に着いたら僕も見ておくよ」
「ありがとう。安室さんもちゃんと避難するよね?」
先程のなまえと同じような瞳でこちらを見る彼。二人の表情が似ていて、思わずくすりと笑みが零れそうになる。
「大丈夫だよ」
「ならいいんだけど・・・。無茶しないでね?」
聡い彼のことだ。俺がこれから何をするのか察しているんだろうか。
本当に彼はどこまで先を見通しているんだろうか、時々怖くなる。
「なまえのことよろしく頼むよ、名探偵君」
少しの笑みと共に彼の肩をぽんと叩きそのまま立ち上がる。
コナン君は何も言うことなく、蘭さんの隣へと戻った。
俺もなまえの隣に戻り、エレベーターの到着を待つ。
エレベーターの扉が開き、フロアが灯りに照らされる。
「下で待ってるからね」
エレベーターに乗る間際、なまえは俺の腕を掴みながらそう言った。
不安を押し殺したその表情。
自分がこれからとる行動がどれだけ彼女を心配させるか、不安にさせてしまうか、そんな事は痛いくらい分かっていた。
けれどなまえは俺の行動を否定もしないし、止めもしない。
そういう彼女だからこそ大切に思し、必ず戻らなければいけないと思えるんだ。
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