続・もし出会わなければ | ナノ
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▽ 8-16



動揺する人達の声が止まないパーティ会場で、私は子供達と共に窓際のソファに座っていた。


「事件どうなったのかなー?」
「コナン君がまたいませんよ!きっとまた一人で抜けがけしてるんですよ!」
「ずりぃーな、コナンばっかり」


毛利さんや零くんと共にステージにいるであろうコナン君への不満の声を漏らす子供達を宥めていると、一つの影がステージ脇からこちらに近づいてきた。


「あ!安室さんだ!」

その姿を見つけた歩美ちゃんが彼の指差す。


人混みの隙間を抜けて私達の所にやって来た彼。

そんな彼に事件のことを聞こうと子供達が口々に話しかける。

零くんはは少しだけ腰をかがめながらいつもと変わらない優しい声で彼らを宥めた。


「もう少しで毛利先生が事件を解決してくれると思うから、皆いい子で待っていようね」


そんな彼の言葉にしぶしぶながらも素直に頷く子供達。


その時、ふと彼と視線が交わる。


何かを伝えるかのようなその視線。私は蘭ちゃん達の傍を離れ、彼の元へと近付く。


私と入れ違いに蘭ちゃん達の傍に戻り、ソファに腰掛ける子供達。



「事件の方はもう大丈夫だと思う。常磐さんの件は組織が関わっているものじゃないはずだ」
「そっか。安室さんはここにいて大丈夫なの?」
「あぁ。事件のことは毛利さんやコナン君に任せておけば大丈夫だと思う。なまえは大丈夫か?」


周りに聞こえないくらいの小さな声で告げられた事件のこと。そして気遣うような彼の視線。


「大丈夫ってなんのこと?」
「あの子達は良くも悪くも事件現場に居合わすことに慣れてるかもしれないけど、なまえはそういう訳じゃないだろ。だから気になって、毛利さんに伝えてこっちに来たんだ」


気遣うような視線の意味を知り、彼への優しさに胸が温かくなる。


たしかに事件現場なんて見慣れるものじゃないし、あの瞬間の衝撃は今でも薄れてはいない。


「大丈夫。心配してくれてありがとう。薄情かもしれないけど、今は皆が巻き込まれなくてよかったって思ってるの」


私は薄情な人間なのかもしれない。

殺人なんてどんな理由があっても許されるものじゃない。それでも身近な人が巻き込まれるのと、一、二度会ったことのある人が巻き込まれるのでは重みが違う。


毛利さんからすれば大切な友人なのに、こんな風に考えてしまう自分がとても冷たい人間に思えてくる。


でも私の心の中は、常磐さんの事件が組織絡みでなかったことで、哀ちゃんが巻き込まれなかったことへの安堵が勝っていた。


「誰だってそうだ。なまえだけじゃない」

そんな胸の中を見透かすように、零くんはそっと私の頭を撫でた。

彼の手の温度が私の心の中のモヤモヤを少しだけ取っ払ってくれた気がした。



その瞬間、突然パーティ会場が揺れ始めたかと思うと、フロアの照明が消えた。


A棟の全ての明かりが次々と消えていく。


「何?この揺れ?!」
「地震か?」

会場はなおも小刻みに揺れ、子供達や招待客達がざわめく。


喧騒の中、私は隣から強い力で腕を引かれた。


「・・・っ・・・!」
「俺だ。そばに居てくれ、離れるな」


いつもより低い零くんの声。

その真剣味を帯びた声が不安を煽る。



まさか・・・。

頭の中に真っ黒な嫌な予感がよぎる。



ステージから降りてきた目暮警部達がB棟側の窓に歩み寄り、窓の外を見た。


「一体、何が起こっているんだ?」

すると、携帯電話でどこかと連絡をとっていた風間さんが「爆発?!」と大きな声を上げる。


その言葉に予感が確信へと変わった。

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