続・もし出会わなければ | ナノ
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▽ 8-15



Another side


事件があったと連絡を受けた目暮警部達は、すぐさま現場に駆けつけた。

閉ざされたカーテンの奥、『春雪の富士』の前で当時の状況をおっちゃん達から説明を受ける目暮警部。


おっちゃんの沢口さんが犯人だという推理を周りの人々は真剣に聞いている。


「そんなのトンチが利いた、ただのこじつけだよ!」
「何だとォー?!」

大きな声でその推理を否定すると、ズカズカと大股でこちらに近づいてくるおっちゃん。


「だって今回のおちょこは割れてなかったじゃない?身を裂くような怒りを表したいんなら・・・・・・」
「うっせぇんだよ!オメーはよ!」

そこまで言うとオレの襟首を持ち上げたおっちゃんは勢いよく放り投げた。



「痛ぇー!!」

舞台袖に背中から落ちたオレは、その痛みに背中をおさえた。


「大丈夫かい?」

舞台袖でじっと『春雪の富士』を見つめていた安室さんが腰をかがめながらオレに視線を合わせる。


「う、うん。それにしてもさっきの推理、安室さんはどう思う?」
「彼女は犯人じゃないだろうね。普通の人間はネックレスにピアノ線を引っ掛けられたら気付くだろう」
「だよね・・・。だったら一体誰が・・・」


腕を組み考え込んだオレの目の前に何かを差し出した安室さん。


その手のひらの上には、一粒の真珠。



「これは・・・っ」
「さっき舞台袖で拾ったんだ。君に預けておくよ」


安室さんはそう言うと、もう一度『春雪の富士』に視線を向けた。



・・・・・・・・・っ・・・・・・!!!


その瞬間、脳裏に一つの可能性が過ぎる。


ばっと安室さんの方を見上げると、彼は小さく頷いた。


だとしたら二件目の原さんの事件はなんなんだ。


彼には原さんの事件の時にアリバイがある。


「原さんは銀のナイフを持ったまま亡くなっていたそうだね」

周りに聞こえないくらい小さな声で安室さんが言った。

そして彼の視線はステージのカーテンの隙間から見えていたバーカウンターへと向けられる。



「・・・・・・っ、もしかして・・・!」
「あぁ。あのあと少し調べて見たら彼は奴らの仲間だった。組織のデータを盗んだせいで目をつけられたらしい」

そこまで言うと彼は立ち上がった。


「あとは君に任せるよ、小さな探偵くん」

口の端に小さな笑みを浮かべながら、おっちゃん達の方へと向かう彼。


たしかに直接ではないとはいえ、組織が絡む事件となると安室さんの立場では大っぴらには動けないんだろう。


オレは彼から貰った真珠をぎゅっと握りしめた。


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